(扉)特集にあたって

  • 吉原 愛 Yoshihara, Ai
    伊藤病院 内科医長
    竹内靖博 Takeuchi, Yasuhiro
    虎の門病院 副院長/内分泌センター センター長
公開日:2023年7月6日
No:a0048/https://doi.org/10.57554/a0048

 甲状腺疾患は内分泌疾患の中での頻度は高いものの、甲状腺ホルモン測定が一般血液検査に含まれない特殊検査であるため、疑って測定しない限りは診断に至りにくい現状がある。そこで、日常診療において甲状腺疾患の可能性を想起するために必要な基礎知識として、甲状腺疾患の頻度、甲状腺疾患を疑うべき症状、見逃さないポイントを京都医療センター 田上哲也先生に解説していただいた。次に、甲状腺機能検査を行った際の評価の注意点、性別や年齢別の評価、偽高値を疑うポイントを群馬大学 山田早耶香先生・堀口和彦先生・山田正信先生に最新の知見を交えてご紹介いただいた。
 甲状腺ホルモンが過剰な状態は、全身にさまざまな症状を引き起こす。しかしその原因疾患によって治療法が異なる。教科書には鑑別診断における甲状腺摂取率検査(シンチグラフィ)の重要性が記載されている。しかし、本検査は実施が難しい施設が多いため、その観点から検査の組み立て方、治療法について田尻クリニック 濱田勝彦先生に紐解いていただいた。甲状腺ホルモンが不足する機能低下症についても、検査の組み立て方、原発性と中枢性甲状腺機能低下症、補充療法の仕方や治療の指標について長崎大学病院 中嶋遥美先生、放射線影響研究所 今泉美彩先生に項目を分けて提示いただいた。
 頸部超音波にて甲状腺内に結節を認めた際には、対応に戸惑うことがあるかと思われる。甲状腺外科の立場から超音波検査での良悪性の判断、穿刺吸引細胞診を施行する基準、細胞診の実際、病理組織分類、手術適応について伊藤病院 北川 亘先生に図表豊富に指南していただいた。
 甲状腺機能異常は妊娠可能年齢の女性に多いことから、妊娠との関連については診療ではよく尋ねられると思われる。甲状腺疾患を持つ女性における妊娠・出産での留意点について国立成育医療研究センター 荒田尚子先生にガイダンスをお願いした。
 今回の特集は甲状腺疾患診療において第一線でご活躍の先生方に執筆いただいた。日々の診療に、実践的に活かせるエッセンスが詰まっている。日常の診療の中で甲状腺疾患を疑い、不安なく診断・治療へとつなげる一助になることを願ってやまない。

著者のCOI (conflicts of interest)開示:本論文発表内容に関連して特に申告なし

甲状腺疾患の診かた ―内科医が知っておきたい勘どころ― 一覧へ