3.最新インスリン注入デバイスを活用した糖尿病治療(ポンプを中心として)

  • 前田泰孝 Maeda, Yasutaka
    医療法人南昌江内科クリニック/一般社団法人南糖尿病臨床研究センター センター長
公開日:2023年11月28日

はじめに

 インスリンポンプを用いた持続皮下インスリン注入療法(CSII)は、頻回注射法(MDI)と比して血糖管理を向上し、患者のQOLを高めるエビデンスが小児や妊婦など一部の集団におけるランダム化比較試験で示されてきたが普遍的な優位性を示すものではなかった 1, 2)。また、持続血糖モニター(CGM)が普及してからは、リアルタイムCGMを使用しているかどうかの方が、MDIかCSIIかよりも血糖管理上の意義が大きいことが明らかになった 3)。すなわち、CSIIにおいてもCGM機能を搭載したSAP(Sensor Augmented Pump)療法の選択が望ましいといえる。しかし、わが国でもハイブリッドクローズドループシステム(HCL)搭載型のインスリンポンプが登場した。HCLは、リアルワールド研究においても従来型のSAPやMDIに対して血糖改善効果が示されている 4)。実際に、基礎インスリンの設定に難渋することがなくなりつつある一方で、上手くHCLを継続できない症例も少なくない 5)。その背景にはさまざまな要因があり、適切な対応でHCL使用率が改善する可能性がある。本稿では、CSIIをどのように安全かつ有効に使用するかについて概説する。

1.インスリンポンプ療法のメリットとデメリット

 CSIIはSAP、HCLと進化し、1型糖尿病診療の最先端であることは疑う余地がない。ただ、医療者・患者の双方に、ポンプにすれば必ず血糖が良くなるという誤解がよくある。特にCSIIは、速効性の高いインスリンを持続投与することで生理的な基礎インスリンを模倣しているという原理上、適切な管理による絶え間ない皮下注射が行われなければ速やかにインスリン枯渇状態となり、糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)に至る、という脆弱性を孕んでいることを決して忘れてはならない。表1にMDIおよびCSIIの選択が望ましい理由をそれぞれ列記した。重症低血糖を繰り返す患者や、妊娠計画時のように厳格な血糖管理が必要な場合などにはポンプ導入に消極的になってはいけないが、導入前には患者およびケア担当者とともに適応をよく検討したい。

表1 頻回注射法(MDI)と持続皮下インスリン注入療法(CSII)の主な選択理由
表1 頻回注射法(MDI)と持続皮下インスリン注入療法(CSII)の主な選択理由

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