6.GIP/GLP-1受容体作動薬(チルゼパチド)の特徴

  • 大西由希子 Onishi, Yukiko
    朝日生命成人病研究所附属医院 診療部長 
公開日:2023年12月14日

はじめに

 2型糖尿病の注射療法において、GLP-1受容体作動薬はすでに定着したが、2023年4月から新たな作用機序であるGIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチドが発売された。

1.チルゼパチドの作用機序

 チルゼパチドはGIPのアミノ酸配列から設計されており、C20脂肪酸側鎖を付加することで内因性アルブミンへの結合性を高めて半減期を長くした週1回の注射投与製剤である 1, 2)。GIP/GLP-1受容体作動薬であるにもかかわらず、週一回のインクレチン関連薬の注射療法で臨床的効果がGLP-1受容体作動薬と似ているためにGLP-1受容体作動薬として誤解されることがある。しかし、この薬剤はGLP-1受容体よりもGIP受容体への結合が強い性質を持つため、新たな作用機序の薬剤と理解すべきである。
 GIPは小腸から分泌されるインクレチンホルモンの一つであり、生理的濃度では、膵臓からのインスリン分泌を促進し、また脂肪細胞への脂肪の貯蔵を促すことなどが知られている。しかし、薬理的血中濃度になると食欲抑制の作用があると考えられている。このような性質を持つGIPのアナログ製剤であるチルゼパチドは、2型糖尿病の治療においては、血糖値依存的なインスリン分泌促進効果と食欲抑制の結果、体重減少によるインスリン感受性が是正されることも相まって血糖値を改善させる。

2.チルゼパチドの適応

 チルゼパチドは2型糖尿病治療薬で、現時点で肥満症治療の適応はない。つまり2型糖尿病ではない人におけるその有効性と安全性の検証は十分にされているとはいえない。

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