≪Ⅱ 臨床現場におけるスポーツとホルモン≫ 1.女性アスリートにおけるスポーツと性ホルモン
公開日:2024年6月5日
糖尿病・内分泌プラクティスWeb. 2024; 2(3): 0038./J Pract Diabetes Endocrinol. 2024; 2(3): 0038.
https://doi.org/10.57554/2024-0038
https://doi.org/10.57554/2024-0038
はじめに
女性アスリートは無月経や月経随伴症状など、女性特有の健康問題を抱えながら競技生活を送っていることが少なくない。これらは競技パフォーマンスだけでなく生涯の健康に関わる可能性もあるため、アスリート自身はもちろんのこと、指導者や医療従事者を含む支援者が早期に問題に気付き、対応することが重要となる。本稿では、女性ホルモンと関わりの深い女性アスリートにおける医学的問題について、無月経と月経随伴症状を中心に概説する。
1.女性アスリートの無月経
競技レベルを問わず、約4割のアスリートに月経周期異常(無月経と月経不順)がみられる 1)。無月経の原因はさまざまあるが、女性アスリートの場合、一般女性に比べて「利用可能エネルギー不足(low energy availability:LEA)による視床下部性無月経」が問題となることが多い。
LEAになると、視床下部からのゴナドトロピン放出ホルモン(gonadotropin releasing hormone:GnRH)、下垂体からの黄体化ホルモン(luteinizing hormone:LH)・卵胞刺激ホルモン(follicle stimulating hormone:FSH)が抑制され、卵巣からのエストロゲンの分泌も抑制される。その結果、排卵が停止し、無月経となる。エストロゲンは子宮や乳房といった女性特有の臓器だけでなく、骨、筋肉、心臓、血管、脳、皮膚などさまざまな臓器に作用しており(図1) 2, 3)、長期間の低エストロゲン状態は全身に影響を及ぼす(表1)。
