≪Ⅰ 運動とホルモン環境の変化≫ 2.スポーツと骨格筋ホルモンの代謝への影響
公開日:2024年5月15日
糖尿病・内分泌プラクティスWeb. 2024; 2(3): 0036./J Pract Diabetes Endocrinol. 2024; 2(3): 0036.
https://doi.org/10.57554/2024-0036
https://doi.org/10.57554/2024-0036
はじめに
運動は糖尿病や肥満症、高血圧症、脂質異常症などの心血管リスクファクターの改善、QOLやうつ状態、認知機能障害の改善、がんの予防効果など、さまざまな作用が知られている(図1)。運動が健康につながるメカニズムは未解明な部分が多いが、筋肉量と寿命とに有意な相関があることが数多くの疫学的研究で報告されるなど 1)、運動の中心的役割を担う器官である骨格筋がその鍵となる可能性が示唆されている。骨格筋は体重の約40%を占め、運動器としての役割以外にも、多臓器と連関し、全身に影響を与えていると考えられており、特にマイオカインが運動と健康のメカニズムを解明する上で注目されている。マイオカインは、ギリシャ語のmyo-(筋)とkine-(作動物質)から作られた造語であり、骨格筋から分泌され、オートクライン、パラクライン、エンドクライン作用により骨格筋自身や遠隔の臓器、組織に作用する生理活性物質の総称である 2)。現在までに数多くのマイオカインが発見され、これらが骨格筋を中心とした多臓器連関として、健康維持や疾患改善に役立っていることが明らかになっている(図2)。本稿では運動によって分泌が変化するマイオカインに着目し、骨格筋や代謝への影響と今後の展望を中心に概説する。