(扉)特集にあたって

  • 原 眞純 Hara, Masumi
    帝京大学医学部附属溝口病院 病院長・第四内科学講座 主任教授
    寺脇博之 Terawaki, Hiroyuki
    聖路加国際大学聖路加国際病院 臨床検査科 部長/帝京大学医学部第三内科学講座 客員教授
公開日:2024年9月6日
糖尿病・内分泌プラクティスWeb. 2024; 2(5): 0065./J Pract Diabetes Endocrinol. 2024; 2(5): 0065.
https://doi.org/10.57554/2024-0065

 この原稿が読者である先生方のお目に届くのはおそらく食欲の秋が到来した頃と思われるが、私どもが本原稿を執筆しているのは「土用の丑の日」を過ぎたばかりの酷暑真っ只中である。「土用の丑の日」というのは江戸時代の名コピーライター平賀源内翁による夏場のウナギ販促コピーであると伝えられているが、そのような事情を抜きにしても、滋養強壮に優れたウナギは実際に夏バテ対策として適した食品である。
 さてウナギの栄養価を食品成分表で確認してみると、100g当たり炭水化物3.5gに対して脂質5.3g、そしてタンパク質13gと、高脂質高タンパクの食材である。すなわち、ウナギのような「滋養強壮に効く」食材は、脂質異常症と高尿酸血症を惹起しやすいのである(血中尿酸は食品内プリン体に由来するのが20~30%で、残りの70~80%はアミノ酸からのde novo経路を介した合成に由来する)。そしてウナギに限らず、われわれが美味しいと思うものをたくさん摂取することは、脂質異常症と高尿酸血症の発症に直結するわけである。
 近代から現代にかけての食糧事情の改善は、われわれが欲する食料品へのアクセスを容易にし、それに伴い脂質異常症や高尿酸血症を含む生活習慣病はコモンディジーズとなった。ちなみに、かつて「成人病」と称されていた疾患群を「成人になることが病気を作るのではなく、われわれを取り巻く現代の生活習慣が病気を作るのだ」と喝破して「生活習慣病」と呼び換えたのは、昭和から平成にかけての医療界における名コピーライター日野原重明先生(元聖路加国際病院 院長)である。
 今回の特集は、脂質異常症および高尿酸血症(尿酸異常症)に関して日常診療で直ちに役立つ内容とすべく、脂質異常症に関しては原が、高尿酸血症(尿酸異常症)に関しては寺脇が、現時点において最もお教えをいただきたい先生方に原稿のご執筆をお願いした。そして結果として、いずれも編者らの期待を大きく超えるすばらしい論文をご執筆いただき、脂質異常症・高尿酸血症(尿酸異常症)に関して大掴みできる一冊に仕上がった。今回の特集が平賀源内翁と日野原重明先生にちなみ、読者諸賢の「臨床現場での“滋養強壮に効く”」「診療の“習慣”が変わる」のに役立つことを、強く願う次第である。

著者のCOI (conflicts of interest)開示:原 眞純;講演料(興和、ノボ ノルディスク ファーマ、住友ファーマ、日本べーリンガーインゲルハイム、日本イーライリリー、第一三共、アステラス製薬)、寺脇博之;アドバイザー料(アプローズ)、講演料(協和キリン、持田製薬)

外来で診るコモンディジーズとしての代謝疾患―脂質異常症と高尿酸血症― 一覧へ