3.脂質異常症に対する食事療法のエビデンスと指導のポイント

  • 藤岡由夫 Fujioka, Yoshio
    神戸学院大学 栄養学部栄養学科 臨床栄養学部門 教授
公開日:2024年10月2日
糖尿病・内分泌プラクティスWeb. 2024; 2(5): 0068./J Pract Diabetes Endocrinol. 2024; 2(5): 0068.
https://doi.org/10.57554/2024-0068

はじめに

 脂質異常症は冠動脈疾患を中心とする動脈硬化性疾患(atherosclerotic cardiovascular disease:ASCVD)の予後を決定する重要な危険因子であり、遺伝的な脂質異常症においてでさえ食生活の是正が予防や治療の基本である 1)。そのため、食事に関する脂質(エネルギー源である脂肪とエネルギー源でないコレステロールを合わせたもの)の生化学的な代謝と臨床的なエビデンスを正しく知ることが重要になる。またダイエットパターンとしての日本食や地中海食、dietary approach to stop hypertension diet(DASH食)が注目されている。本稿では、『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版』 1)と『動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2023年版』 2)を中心にASCVD予防のための食事療法を解説する。なお、内容の詳細や引用文献、また食物繊維(穀物、野菜、果物)、果糖を含む加工品、海藻、ナッツ類などは誌面の都合上割愛するが上記ガイドラインを参照されたい。

1.総エネルギー摂取量と脂肪エネルギー比率

 肥満者においては、総エネルギー摂取量を制限して減量することによる総死亡リスクの減少と脂質異常や血圧の改善がメタ解析で示され、ASCVD予防の可能性があると考えられる。よって、まず適正な総エネルギー摂取量と適正な体重を維持することが大切である。エネルギー比率でみると、炭水化物の摂取エネルギー比率50〜55%で総死亡リスクが最低であり、低炭水化物あるいは高炭水化物食は総死亡リスクを上昇させる 1)。血清脂質については、高脂肪食と比較したところ低脂肪食で総コレステロール(TC)とLDLコレステロール(LDL-C)の低下、トリグリセライド(TG)の上昇およびHDLコレステロール(HDL-C)の低下(通常、わずかな低下にとどまる)が認められる 1)。したがって適正な総エネルギー摂取量のもとで脂肪エネルギー比率20〜25%、炭水化物エネルギー比率50〜60%に設定することが勧められる(表1)。
 目標とする体重の目安は、総死亡リスクが最も低いBMIが年齢によって幅があることを考慮し、かつ肥満症の定義 3)を踏まえて表1および欄外の式から算出する。ただし高齢者では現体重に基づき、フレイル、摂食状況や代謝状態の評価を踏まえ適宜判断する。

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