2.高TG血症に対する治療介入をどう考え実践するか

  • 藍 真澄 Ai, Masumi
    東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 保険医療管理学分野 教授
公開日:2024年9月18日
糖尿病・内分泌プラクティスWeb. 2024; 2(5): 0067./J Pract Diabetes Endocrinol. 2024; 2(5): 0067.
https://doi.org/10.57554/2024-0067

はじめに

 高トリグリセライド血症(高TG血症:hypertriglyceridemia)は、血中トリグリセライド濃度(TG値)が異常高値となる状態であり、高コレステロール血症とともに脂質異常症の代表的な疾患である 1)。TG値が空腹時採血で150mg/dL以上、または随時採血で175mg/dL以上であれば高TG血症となる(表1)。高TG血症は動脈硬化性疾患の重要な危険因子の一つであるほか、TG値が著明高値の状態は急性膵炎の発症要因である 2)。一般外来で日常的に遭遇する高TG血症は、そのほとんどがいわゆる生活習慣病として生活習慣の改善を含めた治療介入を必要とする。本稿では高TG血症の病態とともに、治療介入のポイントについて、特に動脈硬化性疾患発症予防の観点でどのようにすべきかを中心に解説する。

表1 脂質異常症診断基準(日本動脈硬化学会編: 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版. 日本動脈硬化学会, 東京, 2022; p.22.より)
表1 脂質異常症診断基準(日本動脈硬化学会編: 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版. 日本動脈硬化学会, 東京, 2022; p.22.より)

1. 高TG血症の病態と疾患リスク

1)TGの役割と体内での移動

 TGは生体にとって主にエネルギーの輸送媒体として重要である。また、皮下脂肪や内臓脂肪などの脂肪組織で貯蔵される脂質は主にTGである。肥満はこれら脂肪組織などに過剰にTGが蓄積した状況である。
 食事で摂取した脂肪は消化管でいったん分解され小腸で吸収された上でTGに生合成されるほか、肝臓では糖や脂肪酸などを材料として合成される。合成されたTGは血中で脂質を輸送するタンパク、すなわちリポ蛋白に含まれる形でコレステロールなどとともに血中を輸送される。このリポ蛋白は比重によって主に4つの分画に分けられ、比重の低い方からカイロミクロン(chylomicron:CM)、超低比重リポ蛋白(very low-density lipoprotein:VLDL)、低比重リポ蛋白(low-density lipoprotein:LDL)、高比重リポ蛋白(high-density lipoprotein:HDL)と呼ばれる。また、リポ蛋白は比重が小さいほど粒子が大きい。すなわちCMが最も大きく、HDLが最も小さい。CMは外因性リポ蛋白で主に小腸で合成され血中に放出される。VLDLとLDLはいずれも構造タンパクとしてアポリポ蛋白B100(apolipoprotein B100:apoB100)を含む一連の内因性リポ蛋白で、VLDLが肝臓で合成され血中に放出される。CMやVLDL中のTGは血中でリパーゼによる代謝を受け、TGが減少したリポ蛋白は、粒子サイズが小さくなると同時に比重が高くなり、VLDLはLDLとなる。HDLはコレステロール逆転送を担うとともに血中で他のリポ蛋白からTGを受け取り拡散させている。
 TG値は基本的に血中へのTGの供給と血中からの代謝により決まり、供給過剰と代謝遅延の片方あるいは両方が生じると高TG血症となる。供給過剰は主に食餌摂取量が過多の状況で生じ、代謝遅延については後述するがさまざまな要因によって生じ、その要因によって重症度もさまざまである。

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