(扉)特集にあたって

  • 菊池 透 Kikuchi, Toru
    埼玉医科大学 小児科 教授
    井上玲子 Inoue, Reiko
    帝京大学ちば総合医療センター 第三内科 講師
公開日:2025年1月10日
糖尿病・内分泌プラクティスWeb. 2025; 3(1): 0001./J Pract Diabetes Endocrinol. 2025; 3(1): 0001.
https://doi.org/10.57554/2025-0001

 「令和6年版高齢社会白書」によると、2023年10月1日現在の日本の高齢化率は29.1%である。65歳以上の人口は1950年(昭和25年)には総人口の5%に満たなかったが、1995年には14%を超え、2005年には20.2%となり、以降も上昇を続けている。さらに2050年には37.1%に達すると推定されている。平均寿命は男性81.09年、女性87.14年と、わが国は世界に誇る長寿国である(厚生労働省「令和5年簡易生命表」)。
 一方で、健康寿命は平均寿命より約10年短く、個人の生活の質(QOL)の低下を防ぎ、社会的負担を軽減する上で、健康寿命の延伸が今後の大きな課題となっている。ベストセラーとなったリンダ・グラットン氏の著書『LIFE SHIFT-100年時代の人生戦略-』で提唱された「人生100年時代」。この長い道のりを健やかに、自分らしく生き抜くために、医療従事者が果たす役割の重要性はますます増している。
 本特集では、ライフステージ特有の問題を有し、医療ケアが大きく異なる内分泌学的疾患を取り上げ、各分野のエキスパートに執筆をお願いした。小児期発症1型糖尿病について、子どもの成長段階に応じた医療ケアや成人期への移行を見据えたセルフケア能力の習得について、神野和彦先生に執筆いただいた。また、中村伸枝先生には、看護師の立場から、小児・思春期1型糖尿病患者とその家族への指導・支援における心のケアや社会との関わりの重要性について執筆いただいた。さらに、依藤亨先生には、小児がんサバイバーが小児期以降も抱え続ける内分泌後遺症について、ライフステージごとの診療ポイントと成人期医療へのスムーズな移行のための対応について執筆いただいた。そして、人生100年時代の中盤〜後期にかけて、QOLに大きな影響を与え得る女性更年期障害とLOH症候群について、それぞれ北島百合子先生、小川純人先生にその病態と診断・治療の詳細を執筆いただいた。
 エキスパートの詳細かつ実践的で読み応えのある本特集の論文が、ライフステージごとのさまざまな臨床現場で活用いただけることを願っている。

著者のCOI (conflicts of interest)開示:菊池 透;講演料(ノボ ノルディスク ファーマ)、原稿料(エムティーアイ)

ライフステージごとの内分泌代謝疾患 ―人生100年時代を謳歌するために― 一覧へ