2.Childhood Cancer Survivor(CCS)の小児期から成人にかけての内分泌診療
https://doi.org/10.57554/2025-0003
1.小児がん診療の現況
近年のがん診療の進歩に伴い、予後の改善が目覚ましい。とりわけ、治療感受性の高い血液腫瘍、脳腫瘍の多い小児がんにおいては成人のがんに先駆けて高い生存率を示しており、2002~2006年の時点ですでに80%近い発症時5年生存率を示してきた 1)。わが国の小児がん発生率を年間2,000~2,300人 2)とすると、各年齢層の約500~600人に1人が小児がんサバイバー(Childhood Cancer Survivor:CCS)ということになる。また、生物学的に悪性腫瘍ではない頭蓋咽頭腫なども治療後合併症の多さから慣例的にCCSの一部として扱われる。
2.内分泌後遺症の実態
高い生存率は達成されたが、その全てが後遺症なく治癒したわけではない。がん自体、またはその治療による後遺症はさまざまな臓器に及ぶが、中でも内分泌合併症は最も高頻度である 3)。小児がんは成人発症のものと異なる疾患スペクトルを持ち(図1)4)、小児期に多い白血病、脳腫瘍、リンパ腫や乳児期に多い肝芽腫、ウィルムス腫瘍、網膜芽腫などが特徴的である。脳腫瘍のうちでも小児期はmidlineの腫瘍(胚細胞腫、頭蓋咽頭腫、髄芽腫など)が多いことが知られている。主要な内分泌晩期合併症の概略を以下に述べる。疾患の種類、治療の種類によってあらかじめ起こり得る内分泌異常を予測し、モニタリング、加療することは極めて重要で、詳細については日本小児内分泌学会編『小児がん内分泌診療の手引き』 5)(以下、手引き)に記載されている(表1)。小児がんの内分泌診療について、治療中から治療後に至るまでのモニタリング、診断から具体的な治療方法に至るまで詳述されている。
