4.糖尿病関連腎臓病の薬物療法の進歩

  • 川浪大治 Kawanami, Daiji
    福岡大学医学部 内分泌・糖尿病内科学講座 教授
公開日:2025年3月31日
糖尿病・内分泌プラクティスWeb. 2025; 3(2): 0020./J Pract Diabetes Endocrinol. 2025; 3(2): 0020.
https://doi.org/10.57554/2025-0020

はじめに

 糖尿病関連腎臓病(DKD)はわが国の末期腎不全の主たる原因疾患である。近年、腎保護効果を持つ薬剤の登場により、DKDからの末期腎不全への進展抑制が大きく期待できるようになった。これらの背景から『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023』そして『糖尿病診療ガイドライン2024』においても、DKDの薬物療法に関して大幅なアップデートがなされている。共通しているのはSGLT2阻害薬を中心に、非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬、GLP-1受容体作動薬を併用していくという考え方である。従来から用いられているレニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬を加えた、これら4つの薬剤がDKD治療の重要な柱になると考えられる。本稿では、これらの薬剤のクリニカルエビデンスとガイドラインでのポジショニング、今後の展望について述べる。

1.SGLT2阻害薬のエビデンス

 腎アウトカム試験を完了したSGLT2阻害薬はカナグリフロジン(CREDENCE試験)、ダパグリフロジン(DAPA-CKD試験)、エンパグリフロジン(EMPA-KIDNEY試験)の3つの試験において、2型糖尿病合併あるいは非糖尿病CKD患者に対し、腎保護作用を示している 1~3)。『CKD診療ガイド2024』においてもクリニカルエビデンスのあるSGLT2阻害薬としてこの3剤が挙げられ、積極的な使用が推奨されている 4)

1)CREDENCE試験(カナグリフロジン)

 CREDENCE試験(Evaluation of the Effects of Canagliflozin on Renal and Cardiovascular Outcomes in Participants With Diabetic Nephropathy)は、30歳以上の慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease:CKD)合併2型糖尿病患者を対象に、カナグリフロジン100mg1日1回投与の効果をプラセボと比較検討した試験である 1)。主要評価項目は末期腎不全(透析、腎移植、またはeGFR 15mL/min/1.73m2未満の持続)、血清クレアチニン値の倍化、腎または心血管死である。計4,401例をカナグリフロジン群またはプラセボ群に1:1の割合で無作為に割り付け、中央値2.62年間にわたって追跡した。ベースラインにおける平均HbA1cは8.3%、eGFRは56.2mL/min/1.73m2であった。主要評価項目のイベントは、プラセボ群に比べてカナグリフロジン群で有意に低く30%低下していた(ハザード比〔HR〕0.70〔95%信頼区間(CI)0.59~0.82〕、p=0.00001)(図1)。

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