2.糖尿病関連腎臓病の病態多様性

  • 島袋充生 Shimabukuro, Mitsuo
    福島県立医科大学 糖尿病内分泌代謝内科学講座 教授
公開日:2025年3月13日
糖尿病・内分泌プラクティスWeb. 2025; 3(2): 0018./J Pract Diabetes Endocrinol. 2025; 3(2): 0018.
https://doi.org/10.57554/2025-0018

はじめに

 糖尿病を持つ方は、臨床的特徴、すなわち、病態、合併症の起こり方、治療反応性などが個々で異なるため、これらすべて考慮しながら、一人ひとりに最適な医療をすすめることが推奨される 1)。これを、糖尿病の個別化医療(personalized or individualized medicine)と呼ぶ 1)。糖尿病を持つ方の個別化医療を考える場合、合併症の病態と(発症と進展の)プロセスを明らかにすることが肝腎である。近年、糖尿病を持つ方の腎障害の多様性に注目が集まっている 2)。本稿では、糖尿病を持つ方の腎障害の多様性を、人工知能を用いた糖尿病分類という視点から考えてみたい。

1.糖尿病関連腎臓病:糖尿病による腎障害の多様性

 糖尿病を持つ方が慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)を合併・併発するパターンは、糖尿病性腎症(diabetic nephropathy:DN)、糖尿病性腎臓病(diabetic kidney disease:DKD)、慢性腎臓病を合併した糖尿病(Diabetes with CKD)の3つに分けられる 3)。典型的なDKDは、アルブミン尿・蛋白尿の出現後に糸球体濾過量(glomerular filtration rate:GFR)が低下することが特徴で、古典的なDKDあるいはDNとされる。近年、アルブミン尿・蛋白尿を伴わずにGFRが低下する非古典的なDKDが増加している。また、DKDの発症と伸展の経過を、古典的DKD(蛋白尿出現後eGFR低下≒DN)、非アルブミン尿性または非蛋白尿性DKD、アルブミン尿退縮、急速低下(rapid decliner)の4つの軌跡(trajectory)で分けることもある 2)
 金﨑らは、「DKD」の日本語訳として「糖尿病性腎臓病」を「糖尿病関連腎臓病」とすることを提唱した 4)図1)。「糖尿病性」という用語は、全例が「糖尿病状態によって生じる慢性腎臓病である」という誤解を生む懸念があり、「糖病性腎臓病」の使用は、順次中止するとしている。糖尿病関連腎臓病は、糖尿病と関連する病態、併存疾患、治療の影響など、糖尿病状態が病態に影響を及ぼす可能性があるもの全てを含み、糖尿病を持つ方が一生の中で経験する全てのCKDと定義される。糖尿病状態に特有のDNは糖尿病関連腎臓病の中に含まれる。糖尿病に併存するその他のCKDは、糖尿病関連腎臓病と区別するが、糖尿病歴が長期になれば糖尿病状態の影響を受けるため、両者の鑑別はしばしば困難である 4)

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