(扉)特集にあたって

  • 竹内靖博 Takeuchi, Yasuhiro
    虎の門病院 副院長/内分泌センター センター長
公開日:2023年3月8日
No:a0016/https://doi.org/10.57554/a0016

 骨粗鬆症は高齢者の骨折の原因である。一方で、適切に骨粗鬆症を治療することにより骨折を減らせることが実証されている。高齢者の骨折予防は喫緊の社会的課題であり、医療の最前線を担う多くの内科医が果たすべき役割は大きい。内科医は生活習慣への介入と薬物療法を中心にして治療にあたることから、疾患を病態から診ることが習慣となっている。そのため、骨粗鬆症の診療にあたっても、その病態をしっかりと理解することによって、初めて、自信を持って骨折予防という目的を見据えた治療に臨むことができる。しかしながら、骨折予防は薬剤による骨粗鬆症治療で完結するものではなく、骨に大きな外力が及ぶことを予防することも必要である。そのためには、適切な運動および食事の指導による転倒予防やフレイル対策など、非薬物療法が重要である。さらに、薬物療法は長期にわたって継続して初めて骨折予防が可能となることから、治療を継続するための患者支援も必要となる。これらの対応は、糖尿病をはじめとする生活習慣病を診療する内分泌代謝・糖尿病内科医が日々実践しているものであり、そのような診療姿勢を骨粗鬆症診療にも適用することに障壁はないと思われる。
 このような背景から、本特集は、糖尿病・内分泌プラクティスWebの読者に向けた、骨粗鬆症診療のエッセンスを網羅した内容になっている。治療を必要とする患者のスクリーニング、内分泌代謝の視点からみた病態、多くの内分泌疾患や糖尿病と骨粗鬆症との関係について、各々の領域の第一人者に解説していただいている。さらに、薬物療法の考え方や集学的治療、そして骨粗鬆症治療の支援に至るまで幅広い内容を網羅している。本特集は、これまで骨粗鬆症に馴染みの薄かった医師にとってはもちろんのこと、ある程度日々の診療で対応していた医師にとっても、明日からの骨粗鬆症診療の実践の糧となる充実した内容となっているものと確信している。多忙な中、労を惜しまず充実した論文を執筆していただいた筆者の皆様に感謝するとともに、読者の皆様の診療に活用していただけることを願って止まない。

著者のCOI (conflicts of interest)開示:本論文発表内容に関連して特に申告なし

内科医が診る骨粗鬆症 ―病態の理解から集学的治療へ― 一覧へ