1.本態性高血圧の成因・診断・治療法―神経調節異常と本態性高血圧
https://doi.org/10.57554/2024-0018
はじめに
高血圧の発症や進展、高血圧性臓器障害において、交感神経活性化を主体とした神経調節異常が重要な役割を果たしている。交感神経系は、血圧調節に関与する心臓、腎臓、血管などの末梢臓器に強力に作用し、血圧上昇の方向に働く。また、脳は末梢からさまざまな入力を受け、それらを統合・調節し交感神経出力を制御している。本稿では、心・腎・血管の各臓器に対する交感神経系の働きについて概説し、さらに、高血圧における中枢性循環調節機構と、交感神経系亢進の診断と関連する治療について、最新の知見も含めて述べる。
1.心・腎・血管に対する交感神経系の働きと高血圧の発症・進展
交感神経系は心臓、腎臓、血管に対して、以下のような生理的作用を持つ。交感神経系の亢進により、心臓に対しては心収縮力・心拍数の増加、それに伴う心拍出量の増加をもたらす。腎臓に対しては、レニン分泌の増加(レニン・アンジオテンシン〔RA〕系の亢進)、Na再吸収の増加を起こし、血管に対しては血管収縮を引き起こす。交感神経系の持続的な亢進により、これらの慢性的な作用が生じ高血圧を発症し進展する。さらに、各臓器は高血圧性臓器障害を起こすが、持続する高血圧による二次性変化だけでなく、交感神経活性化により血圧非依存的にも臓器障害が進展することが知られている。
脳すなわち中枢神経系は末梢からのさまざまな入力を受け、それらを統合・調節して最終的に全身への交感神経出力を規定している(図1)。交感神経出力の中枢性調節機構はオーバーラップする部分もあるが、末梢からの入力により異なる中枢性機構が存在する。主な中枢性交感神経調節機構を、末梢からの入力により分類して次項より解説する。
