(扉)特集にあたって

  • 下澤達雄 Shimosawa, Tatsuo
    国際医療福祉大学 医学部 臨床検査医学 教授
    一色政志 Isshiki, Masashi
    埼玉医科大学 内分泌・糖尿病内科 教授
    能登 洋 Noto, Hiroshi
    聖路加国際病院 内分泌代謝科 部長/東京医科歯科大学 医学部 臨床教授
公開日:2024年3月13日
糖尿病・内分泌プラクティスWeb. 2024; 2(2): 0017./J Pract Diabetes Endocrinol. 2024; 2(2): 0017.
https://doi.org/10.57554/2024-0017

 2022年の国民生活基礎調査によると、男女とも「高血圧症」での傷病別通院者率(男性146.7人/人口1,000人、女性135.7人/人口1,000人)が最も高く、その数は年々増加している。高血圧の大半は本態性であるが、近年では検査・治療の進展に伴い二次性高血圧の診断が増えてきている。そこで、この「国民病」に対する造詣をあらためて深め、診療の質の向上を図る企画として本特集を組んだ。
 高血圧の最適な診療には、成因・診断・治療エビデンスを適確に理解することが不可欠である。また、高血圧に合併する頻度が高い糖尿病やCKDの病態も同時に把握することが適確な治療薬選択につながる。同時に、近年続々と登場している高血圧およびその関連疾患についての診療ガイドラインの活用も有用である。
 本特集では、病因・病態の解説から始まり治療と予後の説明へとシステマティックに展開する読みやすい形式で、この分野のエキスパートドクターにそれぞれ詳説を執筆していただいた。本態性高血圧の成因・診断・治療法に関して、篠原啓介先生には神経調節異常、河原崎和歌子先生には血管調節異常、荒川仁香先生にはナトリウム調節異常の解説をしていただいた。吉田雄一先生・柴田洋孝先生には、主な内分泌性二次性高血圧疾患である原発性アルドステロン症、クッシング症候群、褐色細胞腫・パラガングリオーマを中心とした最新情報を解説していただいた。さらに、角谷裕之先生・杉本 研先生には、本誌の読者にとって非常に関心があるポイントだと思われる糖尿病と高血圧を合併したケースでのマネージメントをご執筆いただいた。また、昨年上梓された「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023」を踏まえ、長浜正彦先生には生活習慣修正、亀井啓太先生・今田恒夫先生には降圧薬治療を中心に、 CKD合併高血圧のマネージメントを詳細していただいた。
 本特集は、基礎医学的側面と実臨床的側面の両方向からのアプローチによる充実したものとなっていると自負している。読者の方々に、本特集を明日からの日常診療や研究に積極的に活かしていただければ、特集の企画者として至上の喜びである。

著者のCOI (conflicts of interest)開示:下澤達雄;報酬(積水メディカル、EPメディエイト)、講演料(ノバルティス ファーマ、第一三共、サノフィ、大塚製薬)、研究費・助成金(日本ベーリンガーインゲルハイム)、能登 洋;講演料(住友ファーマ、日本イーライリリー、ノボ ノルディスク ファーマ)、研究費・助成金(マルホ)

ホルモンの視点で高血圧を斬る ―病因・病態から治療と予後へ― 一覧へ