(扉)特集にあたって

  • 能登 洋 Noto, Hiroshi
    聖路加国際病院 内分泌代謝科 部長/東京科学大学 医学部 臨床教授
    岡﨑啓明 Okazaki, Hiroaki
    帝京大学医学部附属溝口病院 第四内科学講座 教授
公開日:2026年11月5日
糖尿病・内分泌プラクティスWeb. 2026; 4(6): 0082./J Pract Diabetes Endocrinol. 2026; 4(6): 0082.
https://doi.org/10.57554/2026-0082

 脂質異常症は食事・ライフスタイルの変化や肥満増加を背景に本邦で増加しており、2023年の厚生労働省「患者調査」によると、脂質異常症で治療を受けている推定総患者数は約460万人である。脂質異常症は、冠動脈疾患・脳梗塞・末梢動脈疾患などのリスク増加により健康寿命短縮につながる。スタチンや開発の進む新薬によるLDL-C低下療法は動脈硬化性疾患の予防に大きく貢献してきているが、心血管残余リスクは依然として課題として残っている。また、高トリグリセライド(TG)血症・低HDL-C血症・Lp(a)などの脂質関連因子に加え、炎症・血栓・他の代謝性疾患リスクなども関与することが明らかになっている。さらに、超高度な高TG血症は急性膵炎の原因ともなり得る。こうした残余リスクを適切に評価し、包括的な管理目標に基づく治療を行うことが重要であり、その基盤として食事療法・運動療法などの生活習慣介入が薬物療法と並行して不可欠である。本企画は、この「国民病」に対する造詣を深めて診療の質の向上を図ることを目的としており、病態評価、生活習慣介入、薬物療法の骨子について、それぞれのエキスパートの先生方に解説していただいた。
 増田大作先生には、家族性高コレステロール血症を含む高LDL-C血症に関して、包括的リスク評価と最新の治療薬について、日本人での効果・安全性も含めて解説していただいた。曽根博仁先生には、高TG血症に関して、動脈硬化や急性膵炎への影響、治療アプローチに重点をおいて、特に高TG血症の動脈硬化への寄与が高いと考えられているアジア人でのエビデンスも含めて、詳説していただいた。遠藤康弘先生と小倉正恒先生には、低HDL-C血症の臨床的意義と病態だけでなく、高HDL-C血症の臨床的意義と管理について、新薬の可能性と期待も含めて解説していただいた。蔵野信先生には、残余リスクの評価に有用な脂質関連検査項目に関して、概念や検査法、検査結果の解釈法も含めて解説していただいた。長井直子先生には、食事療法に関して、高LDL-C血症・高TG血症・低HDL-C血症の各病型別の食事療法から、原発性脂質異常症(家族性高コレステロール血症や原発性高カイロミクロン血症)における注意点に至るまで、具体的な指導を含めて解説していただいた。そして田村好史先生には運動療法について、特に脂質異常症にフォーカスをあてて、疫学的解説に加えて実際の運動処方について執筆していただいた。
 本特集は、基礎医学的側面と実臨床的側面の両面からのアプローチにより、充実した実用的内容になったと自負している。読者の方々が本特集を明日からの日常診療や研究に活かしてくださるならば、企画者として望外の喜びである。

著者のCOI(conflicts of interest)開示:岡﨑啓明;研究費・助成金(興和、東ソー、ミノファーゲン製薬)

脂質代謝異常とその最適な治療 ―基礎の理解から最新薬の機序・エビデンスまで― 一覧へ 『4巻6号(2026年11・12月号)』(発行号ページ)へ

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