がんを有する糖尿病患者への療養支援
https://doi.org/10.57554/2026-0075
はじめに
わが国の糖尿病患者における死因の第1位は「がん(悪性新生物)」であり、全死因の38.9%を占めるに至っている 1)(表1)。糖尿病診療の目標は腎不全などの細小血管合併症や心血管疾患などの大血管合併症の発症、進展を防ぎ、糖尿病がない人と変わらない生活の質(QOL)と寿命を実現することである。しかし、現在ではがんと糖尿病の関係やがん患者の糖尿病治療という臨床分野、すなわち「腫瘍糖尿病学(Onco-Diabetology)」の重要性が高まっている。がん患者の糖尿病管理は、単なる併存症のケアにとどまらない。良好な血糖管理は、感染症予防や創傷治癒促進、QOLの維持を通じて、がん治療そのものを支えるサポーティブケア(支持療法)の不可欠な一環と言える。一方で、がん治療に伴うステロイド投与や免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による免疫関連有害事象(irAE)は、急激かつ重篤な糖代謝異常を引き起こす可能性がある。がん患者の状態は病期の進行や治療レジメンに応じて刻一刻と変化し、その管理には高度な専門性と柔軟性が求められる。これに対応するためには、がん専門医と糖尿病専門医の連携を軸としつつ、薬剤師、看護師、臨床検査技師、管理栄養士などの多職種がそれぞれの専門知を結集するチームアプローチが不可欠である。

1.糖尿病とがんの関係
糖尿病(主に2型)は、がん罹患リスクおよびがん死リスクを上昇させる 2)。日本人におけるプール解析の結果、糖尿病合併による相対リスクの上昇は、肝がん(1.97)、膵がん(1.85)、大腸がん(1.40)において顕著である 3)。発がんおよび進行の機序としては、高血糖による酸化ストレスの増大、高インスリン血症およびインスリン様成長因子1(IGF-1)のバイオアベイラビリティ上昇、慢性炎症、さらには脂肪組織から分泌されるアディポカイン(アディポネクチン低下など)の異常が、細胞増殖やアポトーシスの抑制を介して関与していることが示唆されている。逆に、がんに伴う悪液質や、がん治療薬によるインスリン抵抗性の増大が血糖値を悪化させるという双方向の関連性が存在する。