妊娠中の甲状腺疾患への対応Q&A
公開日:2024年8月14日
糖尿病・内分泌プラクティスWeb. 2024; 2(4): 0062./J Pract Diabetes Endocrinol. 2024; 2(4): 0062.
https://doi.org/10.57554/2024-0062
https://doi.org/10.57554/2024-0062
妊娠中の甲状腺中毒症や甲状腺機能低下症は、児へどのような影響を与えることがありますか?
妊娠中の甲状腺ホルモン過剰により、胎児の合併症(胎児うっ血性心不全、早産、子宮内発育遅延、低出生体重など)をきたすとされています。妊娠中の甲状腺中毒症が未治療あるいはコントロールがつかずに妊娠後期に母体に甲状腺中毒症を認める場合、児の中枢性甲状腺機能低下症を引き起こすことがあります。妊娠後期に母体の甲状腺ホルモンが児に移行することで、児の視床下部および下垂体系からなる甲状腺の刺激機構が休憩した状態になってしまいます。その状態で出産すると、母体からの甲状腺ホルモン供給がなくなり、かつ、視床下部下垂体からの甲状腺刺激が抑制されたままとなりますので、児において中枢性甲状腺機能低下症を発症します。通常は、ほとんどの症例で母体の甲状腺ホルモンの管理がなされており、未治療あるいは高度の甲状腺中毒症状態で妊娠後期に至る症例は少ないものと考えられます。しかしながら、新生児マススクリーニングにおいてTSH低値を指摘された症例のうち、一定の頻度で母体の未治療バセドウ病が発見されると報告されています。妊娠中のさまざまな症状と甲状腺中毒症状の差異がわかりにくく、母体が妊娠中に甲状腺中毒症に気が付かずに経過した場合など、今後もこのような病態は生じ得ると考えられます。