リン酸化によるシグナル伝達

  • 粟澤元晴 Awazawa, Motoharu
    国立国際医療研究センター研究所 分子糖尿病医学研究部 室長
公開日:2024年7月10日
糖尿病・内分泌プラクティスWeb. 2024; 2(4): 0057./J Pract Diabetes Endocrinol. 2024; 2(4): 0057.
https://doi.org/10.57554/2024-0057

はじめに

 多細胞生物、特に高度に発達した生命体が生きるためには、環境に応じて生体の機能を素早く制御し、生体の恒常性維持を図る仕組みが必要である。そうした仕組みは異なる細胞同士が相互に情報をやり取りすることによって可能になるが、こうした細胞間情報伝達の方法の一つが液性因子を介した細胞間のコミュニケーションである。
 こうした液性因子は古典的にホルモンと呼ばれるものに相当する。特定の細胞から分泌されたホルモンが標的細胞の細胞表面にある特異的な受容体に結合すると、受け手の細胞内ではホルモンに応じた特異的なシグナルが伝達され、特定の遺伝子発現、運命決定や蛋白の分泌が起きるなど、細胞応答として細胞の状態が変化する。では、このような細胞応答の過程で、シグナルはどのように細胞内を伝わり、その機能の発現を引き起こしているのだろうか。

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