Gタンパク質共役受容体

  • 平本正樹 Hiramoto, Masaki
    東京医科大学 生化学分野 教授
公開日:2024年10月8日
糖尿病・内分泌プラクティスWeb. 2024; 2(5): 0071./J Pract Diabetes Endocrinol. 2024; 2(5): 0071.
https://doi.org/10.57554/2024-0071

はじめに

 Gタンパク質共役受容体(G protein-coupled receptor:GPCR)は細胞膜タンパク質における最大のファミリーで、ヒトでは800種を超えるメンバーから構成される。ホルモン、神経伝達物質、感覚刺激などさまざまな細胞外シグナル分子(リガンド)に対する細胞応答を仲介する。多様な生理反応に関わり、数多くの疾患に関わることも報告されていることから、創薬の標的としても注目度が高く、実際にGPCRを標的とした治療薬が臨床で用いられている。昨今、糖尿病および肥満症の治療薬として使用され、適応外使用でも問題となっているGLP-1(glucagon-like peptide-1)受容体作動薬も、その分子標的であるGLP-1受容体はGPCRである。

1.GPCRの構造と分類

 ヒトでは800種以上のGPCRが存在し、そのリガンドも多岐にわたるが、全てのGPCRは共通の基本構造を有する。7本のαヘリックスが細胞膜を貫通しており、N末端領域は細胞外に、C末端領域は細胞内に存在する。αヘリックス同士は、それぞれ3つの細胞外ループと細胞内ループによってつながっている。細胞内領域のリン酸化修飾は、受容体の脱感作につながる。その他、C末端領域においてパルミトイル化修飾、細胞外領域において糖鎖修飾などを受ける。
 アミノ酸配列の相同性や機能的な役割などから、5つあるいは6つのサブファミリーに分類されるが、800種の多くは下記3つ(A、B、C)のサブファミリーに属する 1)。ファミリーAは最大のサブファミリーで、細胞外にあるN末端領域が短く、膜貫通領域においてリガンドを受容する。受容するリガンドは、ロドプシン、アセチルコリン、アドレナリン、エンドセリンなど、脂溶性低分子からペプチドまで多岐にわたる。GPCRのおよそ半数を占め、揮発性低分子(匂い物質)を受容する嗅覚受容体も、ファミリーAに属する。本稿の後半で取り上げるファミリーBは、100~300アミノ酸からなるやや長いN末端領域において、セクレチン、グルカゴン、GLP-1などのペプチドホルモンをリガンドとして受容する。ファミリーCは、300~600アミノ酸からなる特徴的なドメイン構造を有するN末端領域において、グルタミン酸やγ-アミノ酪酸などを受容する。

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