脂質の代謝
公開日:2024年3月8日
糖尿病・内分泌プラクティスWeb. 2024; 2(2): 0025./J Pract Diabetes Endocrinol. 2024; 2(2): 0025.
https://doi.org/10.57554/2024-0025
https://doi.org/10.57554/2024-0025
はじめに
生体膜の主要な構成成分やエネルギー貯蔵体として重要な役割をもつ脂質の代謝異常はさまざまな疾患の原因となる。肝臓や脂肪細胞での異常は脂肪肝、肥満などのcommonな疾患やまれな脂質蓄積病を引き起こす。また、血中の脂質の大部分を占めるリポタンパクの代謝異常は脂質異常症と動脈硬化症の原因となる。本稿では、これらの臨床的に重要な病態と関連する脂質の代謝異常に関して生化学的観点から概説する。
1.脂質とは
脂質の主な特徴と機能、およびその分類を表1に示す。脂肪酸に代表される炭化水素鎖に富む脂質は高度なエネルギー貯蔵体(トリグリセリド)となり、また、極めて疎水性が高い一方で、一部にリン酸基や水酸基による極性(親水性)を合わせもつ両親媒性のため脂質二重膜を形成し、生体膜の基本成分となる(リン脂質、コレステロール)。また、炭素数20(C=20)のアラキドン酸から派生するエイコサノイド(プロスタグランジン、ロイコトリエン、トロンボキサン)は多様な生理活性を発揮し、アスピリンなどの非ステロイド抗炎症剤(NSAID)の作用はプロスタグランジンH2合成酵素阻害によるエイコサノイドの産生抑制による 1)。その他、コレステロールに由来するステロイドや胆汁酸、ビタミンD、およびその他の脂溶性ビタミン(ビタミンA、E、K)も重要な脂質である(表1)。
