タンパク質とアミノ酸の代謝

  • 林 良敬 Hayashi, Yoshitaka
    名古屋大学 環境医学研究所 内分泌代謝分野 教授
公開日:2024年5月21日
糖尿病・内分泌プラクティスWeb. 2024; 2(3): 0042./J Pract Diabetes Endocrinol. 2024; 2(3): 0042.
https://doi.org/10.57554/2024-0042

はじめに

 タンパク質は三大栄養素の一つで、グラム当たりのカロリーは炭水化物と同じく4kcal程度である。脂質は中性脂肪として脂肪組織に、炭水化物はグリコーゲンとして肝臓および筋肉に貯蔵されるのに対して、タンパク質のエネルギー源としての貯蔵を目的とした特定の分子は知られていない。

 タンパク質はアミノ酸のポリペプチド結合によって構成され、そのアミノ酸の数は、タンパク質の種類によって100程度 1)のものから3万個以上に及ぶもの(筋肉に発現するタイチン) 2)まで多様である。それぞれのタンパク質のアミノ酸配列は、遺伝情報(ゲノム塩基配列)により規定されていて、個々のタンパク質はその特異的な構造に基づいた何らかの機能を担い、生体機能の維持に重要な役割を果たしている。ヒトにおいてタンパク質は体重の13~16%を占める 3)

1.タンパク質とアミノ酸

 食物として摂取されたタンパク質は、消化酵素(ペプチダーゼなど)の働きによってアミノ酸レベルまで分解された後に吸収され、タンパク質の合成に利用、あるいはエネルギーとして消費される。生体を構成するタンパク質もまたアミノ酸レベルまで分解されたのち、食物由来のアミノ酸と同様に利用・消費される。ほとんどのタンパク質は20種類のアミノ酸により構成されているが、これらのアミノ酸の血漿中の濃度は、刻々と変化する生体タンパク質の合成・分解のバランスや、食事を介した摂取による変動の影響を受けながらも、おおむね一定の範囲に保たれている(図1)。なお、栄養学的にはアミノ酸は、体内で合成することができない必須アミノ酸と、合成できる非必須アミノ酸に分類される。図1では、ヒトにおける必須アミノ酸9種類に下線を付してあるが、現代の日本において通常の食事をしていれば不足することはないと言われている 4)

図1 アミノ酸の構造とヒトにおける血漿中濃度(µM)
図1 アミノ酸の構造とヒトにおける血漿中濃度(µM)
血漿中濃度の基準範囲はSRL総合検査案内を参考とした(2023年11月閲覧)。なお総アミノ酸濃度は2.0~3.5mMで、およそ22~38.5mg/dLに相当する。一方、総蛋白は6.7~8.3g/dLであるため、遊離アミノ酸の2~300倍のアミノ酸がタンパク質(グロブリンやアルブミンなど)として血漿中に存在することになる。

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