下垂体機能検査の実際Q&A

  • 渡邉涼香 Watanabe, Suzuka
    千葉大学病院 糖尿病・代謝・内分泌内科
    鈴木佐和子 Suzuki, Sawako
    千葉大学病院 糖尿病・代謝・内分泌内科 講師
公開日:2023年12月1日

 「下垂体機能検査の実際」に関するQ&Aです。

免疫チェックポイント阻害薬による下垂体機能低下症は、どのような時に疑い、どのように診断・治療を進めたらよいですか?

ポイント

  • 抗CTLA-4抗体は複合下垂体機能低下症の、抗PD-1/PD-L1抗体はACTH単独欠損症の誘因となる。
  • 発症時期は、抗CTLA-4抗体は中央値9~12週後、抗PD-1/PD-L1抗体は26週後が多い。
  • まれだが免疫チェックポイント阻害薬による原発性副腎皮質機能低下症も存在し、ACTH正常~増加・コルチゾール(F)低下の際に原発性副腎皮質低下症、ACTH低下・F低下の場合、続発性副腎皮質低下症(ACTH欠損症)を考慮する。
  • ステロイド製剤(点滴、経口、外用、吸入)が投与されているケースが多く、その際にはACTH/Fが抑制されることに留意する。低Na血症、低血糖、好酸球増多があれば副腎不全が疑われる。
  • ACTH分泌低下症に甲状腺機能低下症(中枢性あるいは原発性)を合併している場合は、ヒドロコルチゾン10~20mg/日を補充開始5~7日後に、レボチロキシンを少量(12.5~25µg/日)から開始とする。
  • 続発性副腎皮質機能低下症は不可逆的であり、生涯にわたりホルモン補充療法が必要となる。その他のTSH、 LH/FSH分泌低下症は可逆的であることがほとんどである。
  • 意識障害や血圧低下などの副腎クリーゼが疑われる場合、血液検査結果を待たずにヒドロコルチゾンを100~200mg経静脈的投与を開始する。

1.免疫チェックポイント阻害薬による下垂体機能低下症の概要

 免疫チェックポイント阻害薬による内分泌障害の中でも下垂体前葉機能低下症は甲状腺機能異常に次いで頻度が高いです。中枢性尿崩症の発症は極めてまれです。下垂体前葉機能低下症の発症率は抗PD-1/PD-L1抗体療法では0.5~1%1)、抗CTLA4抗体療法では4~10%と報告されています2, 3)。抗CTLA-4抗体は、自己免疫が活性化されたことで生じる下垂体炎が原因とされ、下垂体腫大を伴う複合型下垂体機能低下症の誘因となります。障害ホルモンはACTHが必発であり、次いでTSH、ゴナドトロピン(LH/FSH)、GHが障害されやすいです。一方、抗PD-1/PD-L1抗体は下垂体腫大を伴わないACTH単独欠損症の誘因となります。下垂体前葉機能低下症の発症時期は、抗PD-1/PD-L1抗体では投与開始から26週後、抗CTLA-4抗体では9~12週後が中央値となります4)。一方、投与開始から数十週間後に発症した例もあるため、免疫チェックポイント阻害薬の投与歴がある患者はホルモン検査を定期的に行う必要があります。

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