がんと糖尿病の最新エビデンス
1.ポイント
・糖尿病とがんには直接の相互関連性がある。
・糖尿病では発がん・がん死のリスクが高まる。
・一方、がん(特に膵臓がん)罹患に伴い糖尿病発症リスクも高まる。
・がん患者が糖尿病を合併すると死亡リスクが高まる。
・糖尿病を合併したがん患者の至適な血糖管理目標・治療法の確立が今後の課題である。
2.総論
2型糖尿病は発がん・がん死リスクの上昇と関連している 1)。また、糖尿病患者は糖尿病を有していないがん患者よりもがんの予後が悪いことも報告されている。糖尿病患者ではがん全般のリスクが約10~20%高まる 1~3)が、日本人糖尿病患者では肝臓がん・膵臓がん・大腸がんのリスクが有意に増加することが判明している 4)(表1)。なお、1型糖尿病とがんリスクの関連性についてはまだ結論に至っていない。

糖尿病とがんには生活習慣的側面が大きい共通のファクターが多数あるが、これらの影響とは無関係に直接の相互関連性があることが究明されてきている 5)(図1)。

糖尿病でがんのリスクが増加する機序として、高インスリン血症・高血糖の関与が提唱されている 5)。HbA1cや血糖値の変動幅との関連も示唆されている 6~8)。
がんで高血糖・糖尿病発症リスクが高まる機序は、病態生理学的ファクターだけでなく精神的ファクターや薬剤の影響など多岐にわたる(表2)。同時に、がん細胞からのIGF-II(insulin-like growth factor II)(血糖降下作用がある)や、肝腎機能低下による糖新生減少や、摂食量低下のために低血糖になることもあり、がん患者の血糖値は乱高下しやすい。
