NAFLD/NASHの最新エビデンス

  • 立石敬介 Tateishi, Keisuke
    聖マリアンナ医科大学 消化器内科学 主任教授
公開日:2024年9月11日
糖尿病・内分泌プラクティスWeb. 2024; 2(5): 0072./J Pract Diabetes Endocrinol. 2024; 2(5): 0072.
https://doi.org/10.57554/2024-0072

ポイント

  • NAFLD患者はわが国で2,000万人以上存在するといわれている。
  • NAFLD/NASHは肝硬変および肝がんに至る病態である。
  • NAFLD/NASHに対する薬物治療について多くの臨床試験が進行中である。
  • 新たな概念として脂肪肝をSLDという形でまとめ、その下でのMASLD/MASHなどの新しい名称による疾患分類が提唱された。
  • MASLD/MASHは代謝、循環器など臓器横断的な疾患としての意味合いも包含している。

1.総論 疫学・機序・治療

 非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease :NAFLD)および非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis:NASH)とは、飲酒歴がないにもかかわらずアルコール性疾患と同様に肝組織に脂肪沈着を認める病態である。1980年代に初めて報告されたが、その後NAFLDの一部にNASHが合併し、線維化の蓄積に伴って肝硬変や肝がんに至ることが明らかとなった。
 日本でのNAFLD有病率は29.7%と報告されており 1)、1989年から2015年までのメタ解析による全世界でのNAFLD有病率25.24%とほぼ同等であった 2)。NASHは年率2.5%程度で肝硬変へ移行すると報告され 3)、NASH由来の肝硬変では年率2%程度の発がん率で、高度肥満や糖尿病合併例では線維化の進行が早く、肝がんの発症リスクが高いとの報告もある 4)
 機序としては、しばしば糖尿病・脂質異常症を合併し、いわゆるメタボリックシンドロームなどを背景とした肝臓への脂肪沈着と(1st hit)、酸化ストレス、脂質過酸化、エンドトキシン、インスリン抵抗性などを伴う炎症細胞浸潤や線維化により(2nd hit)、NASH に進展するというtwo-hit theoryが支持されてきた。近年では多因子によるmultiple-hit theoryも提唱されている。また遺伝子多型(PNPLA3遺伝子など)との関連性も報告されている。
 治療として、NAFLDはメタボリックシンドロームの肝臓における表現型として、消化器のみならず糖尿病や循環器の専門医などと連携し治療に当たる場合が多い。食事・運動療法による肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧の是正が基本である。薬物療法としては糖尿病治療薬、脂質異常症治療薬、抗酸化薬(ビタミンEなど)などの有用性が報告されており、多くの臨床試験も同時に進行中である。また、外科治療として減量手術(胃バンディング手術やバイパス手術)の試みもある。

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