外国人糖尿病患者診療における留意点

  • 岸本美也子 Kishimoto, Miyako
    山王病院 糖尿病内分泌代謝内科 内科部長(糖尿病・代謝)
    山本章子 Yamamoto, Ayako
    山王病院 栄養室
公開日:2023年1月12日

はじめに

 近年、訪日外国人総数は年々増加し、2019年には約3,188万人と過去最高を記録した 1)。しかしながら、2020年1月下旬以降は、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)のパンデミックに伴い、訪日外国人数は激減。入国制限の緩和された2022年11月現在も2019年同月比61.7%減となっているが 1)、今後は入国制限のさらなる緩和、インバウンドの本格的な再開に伴い、その数は次第に増加してくるものと思われる。
 また全世界の糖尿病患者数は現在5億3,700万人を超え、今後も増加の一途をたどり、2045年には7億8,300万人に達すると予想されている 2)。このような世界的な糖尿病事情を鑑みると、本邦において外国人糖尿病患者に対応する機会は今後も増え続けると思われる。
 本稿では外国人糖尿病患者の診療上の留意点について、特に食事栄養療法のポイントについて概説する。

1.言語のハードル

 糖尿病診療においては検査結果とともに、食生活、運動習慣等の生活習慣の聞き取りが重要である。そのためには良好なコミュニケーションが必要であるが、言語が異なれば、そのコミュニケーション自体が困難となる。
 近年、自動翻訳機等のツールも増えているが、その精度と翻訳スピードには依然改善の余地がある。また英語であれば通訳可能なスタッフが対応している病院が増えているが、その他の言語の場合は多くの病院で同伴者の通訳に頼らざる得ない状況にある。同伴者は家族や友人の場合が多いが、メディカルツーリズムの一環としての受診であると、関係業者が立ち会って通訳する場合もある。いずれの場合もプロフェッショナルではない通訳による誤訳の可能性や患者のプライバシー保護が問題となる。電話医療通訳サービスの利用や、医療通訳派遣の依頼という方法もあるが、その場合の料金支払いルールや、急な受診や夜間休日など医療通訳対応が難しい場合の対応は、あらかじめ各施設で検討しておく必要がある。
 実地診療に際し慌てないためにも、普段から関連サイトを検索し、糖尿病診療に関する多言語資料を用意しておくことが望ましい。例えば、国立国際医療研究センター糖尿病情報センターでは、英語版の各種療養指導ツールを作成・掲載している 3)。また「糖尿病リソースガイド」というサイトには「母国語で学ぶ糖尿病」というコーナーがあり、ポルトガル語、スペイン語、フランス語、ヒンディー語、インドネシア語、中国語、韓国語、英語による糖尿病関連のサイトやツールが紹介されている 4)

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