1型糖尿病の治療選択肢(インスリンポンプや持続血糖測定器など)
2023年7月31日に訂正した。
訂正内容については、下記を参照されたい。
https://practice.dm-rg.net/correction/0103_a0044
はじめに
インスリン発見から100年の時を経て、近年のインスリン製剤やデバイスは著しい進化を遂げている。インスリン製剤やデバイスの組み合わせによって治療法にも選択肢が増え、1型糖尿病においてもオーダーメイド医療が意識されるようになってきた。血糖コントロールは、食事、運動量、ストレスなど、生活のすべてが影響する。患者のライフスタイルに合わせた治療法を提案するためには、インスリン製剤やデバイス類に精通し、それぞれのメリット・デメリットを把握しておく必要がある。本稿では、現在本邦で行うことのできる1型糖尿病の治療法についてデバイスを中心に述べる。
1.インスリン療法
1)強化インスリン療法
1990年代に1型糖尿病患者を対象として、強化インスリン療法による厳格な血糖コントロールが細小血管障害の発症および進展予防になるか検討したDCCT/EDIC(The Diabetes Control and Complications Trial)の結果が公表された。これによると、強化インスリン療法(ペン型注入器を用いた1日3回以上のインスリン頻回注射療法[Multiple Daily Injection:MDI]またはインスリンポンプを用いた持続皮下インスリン注入[Continuous Subcutaneous Insulin Infusion:CSII]療法)による厳格な血糖管理が従来の1日1~2回のインスリン療法と比較してHbA1cの改善や細小血管障害の発症・進行抑制に有効であることが示された 1)。以降、1型糖尿病の治療の主流は強化インスリン療法である。
2)MDI療法 vs. インスリンポンプ療法
MDI療法とCSII療法を比較した試験結果はいくつも発表されているが、いずれもDCCT/EDICほど厳密ではなく、小規模で短期間のものが多い。しかしながら、これらの研究結果のメタ解析やシステマティックレビューによると、CSII療法はMDI療法よりもHbA1cを-0.3%(95%信頼区間-0.58~-0.02%)改善させ、重症低血糖を減らしたと報告されている 2)。ただし、CSII療法の優位性はわずかなものであり、米国糖尿病学会(ADA)のガイドラインでもどちらを選択するべきかは各個人の状況に応じて決定するべきと結論付けている 3)。
しかしながら、MDI療法、CSII療法のいずれにおいても、持続血糖測定器(Continuous Glucose Monitoring:CGM)と併用することで、低血糖が減り、なおかつHbA1cが改善することが報告されている 4)。
今後インスリンポンプ療法の中でもCSII療法ではなく、後述するリアルタイムCGM(real-time CGM:rtCGM)と連動するインスリンポンプ療法が主流となった場合、インスリンポンプ療法の有意性が高まる可能性がある。
3)インスリンポンプの適応
厳格な血糖コントロールが求められる人や日によって活動量や生活スタイルに変化が大きい人、血糖コントロールが不安定な人に特によい適応である。
具体的には、妊活中・妊娠中妊娠希望の女性、食べムラが大きく必要なインスリン量が少ない小児、部活動・試験期間などで日々の活動量が大きく変わる学生、シフトワークや出張の多いビジネスマン、暁現象が顕著な人、無自覚低血糖が多い人などが挙げられる。