1型糖尿病の治療選択肢(インスリンポンプや持続血糖測定器など)Q&A
「1型糖尿病の治療選択肢(インスリンポンプや持続血糖測定器など)」に関するQ&Aです。
強化インスリン療法を行っている1型糖尿病患者に、インスリンポンプを導入することになりました。当初のインスリン投与量の設定はどのように行えばよいか、教えてください。
ポイント
●総インスリン量(Total Daily Dose of insulin:TDD)はインスリン頻回注射療法(Multiple Daily Injection:MDI)の時よりも0~20%程度減量することを想定する。
●SGLT2阻害薬は内服中止する。
●導入時の基礎レートは24時間フラット、多くても2~3段階に留める。
●基礎インスリン量に段階をつける場合には、持続血糖測定器(Continuous Glucose Monitoring:CGM)で血糖変動を把握しておく。
●ボーラスインスリンの注入量はMDIの際の単位と大きな変更なし。
<TDDを把握する>
インスリンを少量ずつ注入することで皮下からの吸収効率が上がるため、通常、インスリンポンプに切り替えるとMDIの時よりもTDDが減ることが知られています。TDDは日によって変動があるため、直近1週間のTDDを調べて、平常時のTDDを把握しておきます。
<1日あたりの基礎インスリン量を決める>
初期の基礎レートの総量は、MDIでのTDDから0~20%程度減量したうちの40~50%を目安とします。基礎レートの比率は個人差もあるため、設定した基礎レートの総量がMDIでの基礎インスリン量から0~20%程度減量したものと大きな乖離がないか確認します。(通常、基礎レートの比率は1日あたりの総インスリン量[TDD]の35~50%といわれています 1)。厳しい糖質制限を行っている人などでは基礎レートの比率が60%に上ることもあります。一方で、日本人の基礎レート比率は30%程度という報告もあります。)SGLT2阻害薬を内服していた場合は、内服を中止し、その分基礎レートを10%ほど上乗せしてください。
<時間あたりの基礎インスリン量を決める>
基礎レートの総量が決まったら、何段階で導入するかを決定します。その際に参考になるのがCGMデータです。可能な限り、一定期間CGMを装着し、24時間の血糖変動を把握し、基礎レートをフラットで導入するか、段階をつけて導入するか決定します。基礎インスリンを増減する場合には高血糖/低血糖が起きやすい時間の1~2時間前から、基礎レートを増量/減量します。
HCL(Hybrid Closed Loop)療法を想定している場合には、今後基礎インスリンは自動注入となり日々の注入量に再現性がなくなります。このため、導入時の基礎レートはフラット、もしくは低血糖回避のための最小限の段階付けに留めます。