膵性糖尿病Q&A
公開日:2025年10月16日
糖尿病・内分泌プラクティスWeb. 2025; 3(5): 0079./J Pract Diabetes Endocrinol. 2025; 3(5): 0079.
https://doi.org/10.57554/2025-0079
https://doi.org/10.57554/2025-0079
アルコール多飲による慢性膵炎、膵性糖尿病の患者が低血糖発作で搬送されてきました。本人、家族に対する説明(病態、今後の低血糖予防策、起こった時の対応)について教えてください。
本編で述べた膵切除後以外に、進行した慢性膵炎も膵性糖尿病の原因になることが知られています。慢性膵炎では非代償期になると膵の線維化により膵β細胞だけでなく膵α細胞も障害されるため、インスリンのみならずグルカゴンの分泌不全も認めることが特徴です。その結果として血糖変動が大きく不安定になり、糖尿病治療に際して重篤な低血糖を生じやすく、さらに遷延する傾向があります。また、慢性膵炎による膵外分泌機能不全に対しては、膵消化酵素薬の補充療法を行うことで、まず栄養の消化・吸収を改善させることが重要です。その上で、必要に応じてインスリン療法による糖尿病治療を行います。またアルコール多飲がある患者については言うまでもなく禁酒指導が重要ですが、これはなかなか容易なことではなく、必要に応じて精神科へのコンサルテーションも検討したほうがよいと思われます。時に意識障害を伴うレベルの重症低血糖をきたすため、患者本人だけでなく、家族にも低血糖の発見および対処法について十分な指導をしておくことが重要です。重症低血糖で頻回に救急搬送されるような場合には、一日を通した血糖推移の評価および糖尿病治療の方針を再検討するために、入院してもらうことも考慮してください。
参考までに、以下に対処法について、患者本人および家族への説明例を示します。