クッシング症候群―診断・治療の最新エビデンス―

  • 高野幸路 Takano, Kouji
    森山記念病院 内分泌代謝内科 部長
公開日:2024年6月11日
糖尿病・内分泌プラクティスWeb. 2024; 2(3): 0043./J Pract Diabetes Endocrinol. 2024; 2(3): 0043.
https://doi.org/10.57554/2024-0043

ポイント

  • クッシング症候群は症状が非特異的と考えられており、診断が遅れがちな疾患である。しかしながら、診断に役立ついくつかの典型的な身体所見、症状を知っていると診断を早めることができる。クッシング症候群を疑った際の確定診断は、①病的な高コルチゾール血症があることの診断、②血中ACTH値測定によるACTH依存性の有無の確認、③ACTH依存性の場合はクッシング病と異所性ACTH産生腫瘍との鑑別、というように、順を追って行う。
  • 診断確定に時間をかけて、その間に日和見感染症を発症させないことが大事である。著しい高コルチゾール血症(例えば40μg/dL以上など)が見出された場合は、ただちに治療を始めることによりカリニ肺炎や日和見感染症などの重症感染症の発症を予防する必要がある。診断は高コルチゾール血症をコントロールしたのちに行ってもまったく支障はない。この際の治療は、副腎酵素合成阻害薬による自発性コルチゾール分泌を強力に抑制するとともに、コルチゾールが低下してきたらコルチゾールの補充を加える「block and replace療法」で行うことが事故を少なくする秘訣である。

1.総論

1)診断に役立つ症状、所見

 高コルチゾール血症による身体所見は皮膚萎縮と近位筋萎縮が重要で、満月様顔貌、鎖骨上脂肪沈着、水牛様脂肪沈着、中心性肥満などが認められる。
 本症の患者は耐糖能障害や糖尿病、高血圧、骨粗鬆症の患者の中に隠れているので、これらの患者では皮膚萎縮の有無や筋肉量を診察することでクッシング病を鑑別することが重要である。

2)典型的なクッシング症候群の症状、所見

 クッシング症候群の症候は、以下に分けて考えるとよい。

  • 慢性の高コルチゾール血症による症状
  • ACTH分泌亢進に伴う症状(ACTH依存性クッシング症候群)
  • ACTH分泌抑制に伴う症状(ACTH非依存性クッシング症候群)

(1)慢性の高コルチゾール血症による症状

 中心となる症候である。2つの症候(皮膚萎縮と近位筋の委縮)が特に診断に有用である。

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