苦労しています、服薬指導 ―短時間で患者の心を掴み、リスク回避!
https://doi.org/10.57554/2024-0011
はじめに
特定薬剤管理指導加算は、適正使用ができていないことで患者に大きな健康被害を及ぼす可能性のあるハイリスク薬に関する服薬指導について、薬剤師の専門的能力を活かし、適正かつ安全な使用ができるよう2010年度調剤報酬改定で新設された。 薬学的知見を最大限活かすことが求められる点数であり、薬剤師の対人業務の中核の一つと言える。
日本薬剤師会が「薬局におけるハイリスク薬の薬学的管理指導に関する業務ガイドライン」 1)を策定したことなどを背景とし、ハイリスク薬に関する服薬指導について診療報酬だけでなく、調剤報酬においても処方箋受付1回につき特定薬剤管理指導加算として10点を算定できるようになった。糖尿病薬関連では、「糖尿病用剤」および「膵臓ホルモン剤」が該当する。
つまり、医師のみならず、薬剤師が患者または患者家族に対して、正確に必要な薬剤の情報を伝えることが法的に認められたことを意味し、多くの保険薬局で糖尿病薬を交付する際に責任をもって対応している。しかし、一方で保険薬局での服薬指導にかかる平均時間は3~4分であり 2)、法的に求められる情報提供量を短時間に正確に伝えることは大変難しい。
今回は、糖尿病治療薬の特定薬剤管理指導加算および関連加算の算定条件と、これまでに筆者らがさまざまな背景の患者に対して行ってきた服薬指導について紹介する。
1.薬剤師による服薬指導
薬剤師が医薬品を処方箋により調剤し、薬剤師が患者または患者家族に対して行う服薬指導の項目は多岐に及ぶ。薬学部における実務実習では、ハイリスク薬に指定されていない医薬品においても服薬指導時に確認・説明する主な項目として下記が挙げられている。
- 薬の説明(効果・効能、用法・用量、併用薬、剤型、臭い・味)
- ジェネリック医薬品についての説明(薬効、薬価、選び方、先発医薬品との相違点など)
- 費用に関する説明(調剤報酬、保険など)
- 副作用の説明
- 生活上の注意点(飲食、睡眠、入浴など)
- 使用上の注意点(服用間隔、保管方法など)
- 乳幼児、小児、高齢者、妊婦に対する使用上の注意点
- 検査値の確認
- お薬手帳についての説明
- 患者教育、患者情報の確認
- 疾患の予防などについての説明(QOL向上、予防接種推奨など)
- 患者が罹患している疾患についての説明
- 患者との処方確認(処方薬と疾患の関連性の確認)
- 薬剤師業務の必要性の説明(処方監査、服薬指導など)
- 保険薬局への問い合わせ方法(夜間の電話対応など)
- かかりつけ薬局、かかりつけ薬剤師の必要性
保険薬局におけるハイリスク薬(特定薬剤)には下記内容の調剤報酬の算定が可能である。