6.骨粗鬆症管理の向上に向けた取り組みとリエゾンサービス
https://doi.org/10.57554/2026-0071
はじめに
リエゾン(liaison)とはフランス語で「連絡係」「連絡窓口」「つなぎ」を意味し、異なる部門や組織間のコミュニケーションを円滑にする役割を担う人物を指す。骨折リエゾンサービス(Fracture Liaison Service:FLS)は、脆弱性骨折の予防を改善することを目的として1990年代後半に欧州で開始され、その高い有用性から現在では世界各国に普及している。
本稿では、2025年に改訂された『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン』 1)に盛り込まれたリエゾンサービスの内容について解説する。
1.リエゾンサービスとは?
FLSの主たる目的は、脆弱性骨折患者を対象とした二次性骨折(脆弱性骨折に引き続いて生じる骨折)予防である。脆弱性骨折発生例では、骨密度や年齢などの背景が同じ例と比較して、引き続いて骨折を生じるリスクが高い。例えば手関節部骨折既往例や椎体骨折既往例では、大腿骨近位部骨折の発生リスクがそれぞれ1.9倍、2.3倍高まる 2)。
骨粗鬆症では骨密度が低下し、骨脆弱化を生じただけでは症状を発現しないことから、骨折の既往がなく、診断に至る例は、骨粗鬆症検診でスクリーニングされたか、他疾患で診断・治療されている症例で骨折リスクが高いと考えられ検査が実施された例となる。従って、骨粗鬆症例の中で薬物治療が実施されているのは全体の30%程度と言われている。また臨床症状に乏しいことから、薬物治療の継続率は1年目62.1%、2年目45.3%である 3)。
これに対して脆弱性骨折例は医療機関で骨折治療を受けているため、把握が容易である。さらに脆弱性骨折例では骨折に伴う疼痛や機能制限を自ら経験しているため、骨折予防のための骨粗鬆症治療に対する理解が得られやすい。そこで脆弱性骨折例を対象にした二次性骨折予防は治療効率が高く、費用対効果に優れる 4)。
しかしながら、脆弱性骨折例に対する二次性骨折予防の実施率は低く、整形外科医によって骨折治療が行われた例の1/5以下しか、骨粗鬆症治療が実施されていないことが知られていた 5)。この理由は骨折治療を実施する整形外科医が、二次性骨折予防、すなわち骨粗鬆症治療に対して関心が低く、そのため骨折患者への適切な対応がなされていないためである。
このような背景から欧州では、FLSが1990年代末から試みられた。FLSは骨折治療を実施する整形外科医ではなく、看護師を中心とするコーディネーターがリエゾンとなって二次性骨折予防を実施する仕組みである 6)。FLSではリエゾンが5つのiステップ(5i)、1)全ての脆弱性骨折患者を見つけ出す(identification)、2)骨折リスクの評価(investigation)、3)投薬を含む治療の開始(initiation)、4)患者のフォローアップ(integration)、5)教育と情報提供(information)を実施する(図1)。
効率的かつ効果的な二次性骨折予防を実現するための必要最低限の指標および基準を提供するために『FLSクリニカルスタンダード』が作成され、最近改訂された(http://www.josteo.com/data/medical/secondary/02.pdf)。『FLSクリニカルスタンダード』では上記の5iの具体的な内容を紹介し、FLSの質向上に関連する重要業績評価指標(Key Performance Indicator:KPI)として薬物治療開始率、薬物治療継続率、追跡率(データ入力率)が設定されている。