7.≪特論≫骨粗鬆症検診のこれから

  • 飯高世子 Iidaka, Toshiko
    東京大学22世紀医療センターロコモ予防学講座 特任講師
    堀井千彬 Horii, Chiaki
    さいたま赤十字病院 整形外科 医長
    田中 栄 Tanaka, Sakae
    東京大学大学院医学系研究科整形外科学 教授
    吉村典子 Yoshimura, Noriko
    東京大学22世紀医療センターロコモ予防学講座 特任教授
公開日:2026年10月22日
糖尿病・内分泌プラクティスWeb. 2026; 4(5): 0072./J Pract Diabetes Endocrinol. 2026; 4(5): 0072.
https://doi.org/10.57554/2026-0072

はじめに

 骨粗鬆症は、骨強度の低下によって骨折リスクが増大する代表的な加齢性疾患である 1)。厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」によると、介護が必要となった主な原因として、骨折・転倒が3位に位置している 2)。従来、骨折・転倒は高齢による衰弱に次ぐ位置であったが、近年ではその順位が逆転しており、骨粗鬆症に起因する脆弱性骨折が高齢者の日常生活動作(ADL)や生活の質(QOL)の低下に深く関与していることが示唆される。超高齢社会を迎えたわが国において、高齢者のQOL維持・向上、健康寿命の延伸、さらには医療・介護負担の軽減を図る上で、骨粗鬆症予防の重要性はますます高まっている。
 一方、骨粗鬆症をはじめとする運動器疾患は、慢性的に進行し、自覚症状に乏しいことが特徴である。そのため、症状出現前に医療機関を受診する機会が少なく、早期段階での発見は容易ではない。こうした背景から、骨粗鬆症の早期発見・早期介入を実現するためには、地域住民を対象とした検診体制の整備と受診促進が重要である。

1.「健康日本21」と骨粗鬆症検診の現状

 各自治体による骨粗鬆症検診は、健康増進法に基づき、主として40~70歳の女性を対象に5歳刻みの節目年齢で実施され、問診および骨量測定が行われている。都道府県別の検診実施率は平均約60%と一定程度普及している一方で 3)、検診率は0~15%の範囲に分布し、全国平均は約5%と極めて低い状況にある(図1)4)。制度として検診が存在していても、住民に十分活用されていないことが大きな課題である。
 この背景には、骨粗鬆症が自覚症状に乏しいこと、疾患や検診の重要性に対する認知が十分でないこと、自治体間で検診体制や受診勧奨方法に差があることなどが指摘されている。2024年度から開始された国民健康づくり運動「健康日本21(第三次)」では、健康寿命の延伸と健康格差の縮小を基本理念に、生活習慣病予防、生活機能維持、女性の健康支援などを柱とした健康施策が推進されている 5)。特に第三次計画では「女性の健康」が新たに重点項目として位置づけられ、骨粗鬆症検診受診率の向上が具体的な目標指標として採用された。現状約5%の受診率を2032年度までに15%へ引き上げる目標が掲げられており、ロコモティブシンドローム予防や健康寿命延伸の観点からも、検診実施率・受診率向上に向けた検診体制の見直しと受診促進策の強化が急務である。

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