下肢切断を回避するために医療連携を含めたチーム医療を活用する Q&A

  • 橘 優子 Yuko, Tachibana
    順天堂大学医学部附属順天堂医院 足の疾患センター 副センター長
公開日:2023年3月22日

「下肢切断を回避するために医療連携を含めたチーム医療を活用する」に関するQ&Aです。

 糖尿病性足病変のチーム医療を機能させるアイデア・コツを教えてください。

 糖尿病の足病変対応において、フットケアチームを機能させていくことに課題を感じている医療者はたくさんいるのではないでしょうか。これはどの医療機関でも多かれ少なかれ直面する課題であり、わが国の医療システム上の課題でもあります。わが国の医療は診療科ごとに専門性が分かれた縦割りの医療を行っているため、糖尿病性足病変のような全身から局所までを総合的に治療するチーム医療がスムーズにいかないことが多いのです。
 フットケアの実践者である看護師においても、組織横断的に活動する立場にある者はごく一部の専門資格(糖尿病看護認定看護師や皮膚・排泄ケア認定看護師など)を有する看護師に限られていることが多く、ほとんどの看護師はいずれかの部署に属し、その部署の業務範囲を超えて活動することは難しいと思います。ですから、「うまくいかない」としてもそれは当たり前の状態だと受け止めることも大事だと思っています。
 では、このような医療環境の中でフットケアチームを機能させていくにはどうすればいいでしょうか。

 みなさんの描く理想のチーム医療とはどのような形でしょうか。多診療科の治療介入が必要な足病変に対し、各診療科が気軽に相談し合える関係にあり、治療介入も迅速で、その後も必要な医療が途切れることなくつながっていく、そんな形が理想でしょうか。筆者もこのような形であればいいと思い続けていますが、現実はそう甘くはありません。

チーム医療は簡単じゃない!

 よく耳にする話として「フットケアに興味を持ってもらえなくて仲間が増えない」ということがあります。これは一側面としては事実なのかもしれませんが、医療者であれば糖尿病性足病変が下肢切断の主要な原因であることは知っており、フットケアに興味がないわけではないと思っています。加えて、足を診ることは手間がかかりますから、「誰かやってくれたらいいのに」と思って、興味はあるものの手を出せない医療者もいると思います。「フットケアが重要で必要なことはわかっているよ、でもね…」という、各医療者が抱える「事情」がチーム医療の阻害因子になっていることが多いのではないでしょうか。この「事情」はさまざまですが、医師を含め各医療者が抱える業務量の多さ、迅速に対応したくても他にも目の前に患者がたくさんいる、自分だけ通常業務とは別にフットケアに優先的に時間を割けない、上長の了承が得られないなど、挙げればきりがありません。ですから、チーム医療をするにおいてはこの「事情」を理解し、理想と現実のギャップをどのような方法で埋めていくかを見つけることが重要であると思います。
 筆者は足の疾患センターで気軽に相談できる診療科の医師が仲間にいる環境にいながらも、自施設の医療環境の「事情」を鑑みながらチーム医療を実践しています。手術や会議などで多忙な医師と常時連絡が取れるわけではありませんし、筆者からの相談が常に優先されるわけでもありません。先に述べたような理想形ではないことが多々ありながらも、「今できる最善を」という気持ちでチーム医療を進めています。

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