(扉)特集にあたって

  • 下村伊一郎 Shimomura, Iichiro
    大阪大学大学院医学系研究科 内分泌・代謝内科学 教授
    山内敏正 Yamauchi, Toshimasa
    東京大学大学院医学系研究科 糖尿病・代謝内科 教授
    芥田憲夫 Akuta, Norio
    虎の門病院 肝臓内科 部長
公開日:2026年1月8日
糖尿病・内分泌プラクティスWeb. 2026; 4(1): 0001./J Pract Diabetes Endocrinol. 2026; 4(1): 0001.
https://doi.org/10.57554/2026-0001

 近年、肝臓は肥満症を代表とする代謝異常症候群の中核をなす臓器であるとの認識が一層強くなり、抗肥満症薬などの治験でも常に肝臓の臓器障害が主要アウトカムのひとつとなる時代が来ている。
 2023年、脂肪性肝疾患(SLD)の新たな分類が発出され、アルコール摂取量を基準に代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)/代謝機能障害アルコール関連肝疾患(MetALD)/アルコール関連肝疾患(ALD)とされた。現在、最新のガイドラインの作成が進んでいる。2026年発刊を目指した改訂作業は、『MASLD診療ガイドライン』への書名変更からはじまり、海外との齟齬がなく、本邦の実態に即したガイドラインを作成することを目的とした。特に、高齢者や非肥満例が多い本邦の実態には細心の注意が払われた。概念・定義では、心代謝系危険因子(CMRF)に含まれるBMIや腹囲は海外の基準が妥当であるのか。診断では、高齢者のFIB-4 indexも含め、いかなる非侵襲的肝疾患評価法(NILDA)を活用して肝硬変・肝がんハイリスク症例を絞り込み、専門家に紹介すべきか。肝臓以外のイベントとして、脳心血管系や肝臓以外の悪性疾患は特に重点的に啓発が試みられた。治療では、BMIに応じた体重減量の基準や、2型糖尿病/肥満症/脂質異常症の併存疾患治療の最新エビデンス、さらに薬物療法の時代まで視野に入れた将来の展望が示された。
 2025年8月、FDAはこれまでunmet needsの代表のひとつであったMASHのStage 2-3に対する薬物療法として、GLP-1受容体作動薬のセマグルチドを迅速承認した。さらに、非肝硬変MASHの臨床試験において、肝生検に代わる合理的な評価法として、VCTE(vibration-controlled transient elastography)を用いたフィブロスキャンによる肝硬度測定を認める意向書を受理した。これにより、MASLD診療は、いよいよNILDAを用いた薬物療法の時代を迎えようとしている。
 中でも、肥満症をターゲットとした薬物療法は、MASLD治療戦略の大きな柱のひとつと言える。本特集では、肥満症がMASLD診療に及ぼすインパクトを中心に構成させていただいた。

著者のCOI(conflicts of interest)開示:下村伊一郎;講演料(興和、日本イーライリリー、ノボ ノルディスク ファーマ)、研究費・助成金(国立研究開発法人日本医療研究開発機構、キャンサースキャン、興和、小林製薬、日清食品、ロート製薬)、奨学(奨励)寄附(住友ファーマ、鈴木万平糖尿病財団、みどり健康管理センター、協和会、伯鳳会大阪中央病院、伯鳳会はくほう会セントラル病院、日本内分泌学会)、山内敏正;講演料(MSD、住友ファーマ、帝人ヘルスケア、日本ベーリンガーインゲルハイム、ノボ ノルディスク ファーマ、日本イーライリリー、田辺三菱製薬)、研究費・助成金(興和、ニプロ、日東紡績、メドミライ)、奨学(奨励)寄附(住友ファーマ、田辺三菱製薬)、寄附講座(ノボ ノルディスク ファーマ、日本ベーリンガーインゲルハイム、興和、日東紡績、朝日生命保険相互会社)

肥満症・MASLD/MASH研究最前線 ―病態解明から治療、そして未来へ― 一覧へ 『4巻1号(2026年1・2月号)』(発行号ページ)へ

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