5.妊娠中の内分泌性高血圧症の治療

  • 立木美香 Tsuiki, Mika
    国立病院機構 京都医療センター 内分泌・代謝内科 医長
公開日:2024年2月14日
糖尿病・内分泌プラクティスWeb. 2024; 2(1): 0006./J Pract Diabetes Endocrinol. 2024; 2(1): 0006.
https://doi.org/10.57554/2024-0006

はじめに

 高血圧を合併する妊婦は6~8%であるが、その大部分(88%)は本態性高血圧症で、内分泌性高血圧症は1%未満と非常にまれである 1)。本稿では、妊娠中の内分泌高血圧症として原発性アルドステロン症(primary aldosteronism:PA)、褐色細胞腫・パラガングリオーマ(pheochromocytoma/paraganglioma:PPGL)の診断・治療について述べる。

1.原発性アルドステロン症(PA)

1)疫学

 一般の高血圧患者におけるPAの有病率を約10%とすると、全妊婦の0.6~0.8%でPAと診断されると推定される 2)。しかし実際は、英国のコホート研究では約300万件の妊娠でPAと診断された症例は3例のみであること 3)、また妊婦のPA症例の報告は数十例と少ないことから、診断されていない症例が極めて多いと考えられる。

2)病態

 正常妊婦において、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系は亢進している。胎盤より産生されるエストロゲンによりアンジオテンシノーゲン産生が増加し、血中レニン活性が上昇する。レニン活性の上昇はアンジオテンシンⅡを上昇させ、糸球体でのアルドステロン産生を促進する。しかしプロゲステロンが遠位尿細管でのアルドステロン作用を減弱させるため、正常妊婦において通常は血圧上昇をきたさない。
 PA合併により高血圧の増悪が予想されるが、妊婦における経過は多様で、血圧コントロール不良により胎児や母体の重篤の合併症を引き起こす例から、妊娠中に血圧が改善する例などさまざまである。PA合併妊婦において正常妊婦と比較して、妊娠関連合併症の発症率が高いとされる。特に妊娠高血圧腎症はPAを有する妊婦の3分の1に見られると報告されている 4)

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