3.高齢1型糖尿病の治療

  • 利根淳仁 Tone, Atsuhito
    岡山済生会総合病院 内科・糖尿病センター 副センター長
公開日:2024年7月23日
糖尿病・内分泌プラクティスWeb. 2024; 2(4): 0053./J Pract Diabetes Endocrinol. 2024; 2(4): 0053.
https://doi.org/10.57554/2024-0053

はじめに

 近年、インスリンポンプや持続グルコース測定(continuous glucose monitoring:CGM)など先進デバイスの進化により1型糖尿病の治療成績は向上し、以前と比較すると低血糖リスクを低減しながら安全かつ良好な血糖コントロールを実現することが可能になってきた。一方、低血糖リスクの高い高齢1型糖尿病患者には本来、先進デバイスを活用した安全な治療が望まれるが、認知機能低下やデジタルリテラシーの問題で先進デバイス導入の障壁となることも多く、大きな課題を抱えている。
 本稿では、高齢1型糖尿病の治療について、先進機器の活用という観点も含めてその現状と今後の展開について解説する。

1.高齢1型糖尿病患者の特性と課題

 WHO (世界保健機関) では65歳以上を老年期 (または高齢期) としているが、身体的・精神的な老化の進行は多種多様であり、患者個々に応じた対応が必要となる。一般に高齢者糖尿病の治療に際して問題となる点として、記銘力・認知機能の低下、ADL低下、糖尿病合併症も含めた臓器障害の進行、癌の合併などが挙げられる。米国糖尿病学会が発行する「Standards of Care in Diabetes(糖尿病標準治療)2024」 1)では、治療の単純化と減処方が提唱されており、特に食事に対するインスリン(prandial insulin)を減量または中止することにより低血糖リスクの低減を目指している。
 高齢1型糖尿病患者においても低血糖予防に重点を置いた治療内容および治療目標の適正化を図ることは重要であるが、prandial insulinの減量・中止は血糖コントロールを大きく乱すことにつながり、ステップダウンも含めた治療の個別化に難渋するケースも多い。本人や家族の状況あるいは介護施設などの社会環境的な要因で、それまで行ってきたインスリン頻回注射療法やインスリンポンプ療法が継続できず、1日1回の持効型インスリン注射など不十分な治療を余儀なくされる場面もあり、今後、社会基盤のさらなる整備が望まれる。

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