原発性アルドステロン症の治療―原発性アルドステロン症治療の最新エビデンス―

  • 竹内 牧 Takeuchi, Maki
    東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科 助教
    槙田紀子 Makita, Noriko
    東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科 准教授
公開日:2023年11月16日

1.ポイント

  • 原発性アルドステロン症(primary aldosteronism:PA)は二次性高血圧の中でも最も頻度が高く、恒常的なミネラルコルチコイド受容体(mineralocorticoid receptor:MR)活性化が臓器障害を引き起こす。
  • アルドステロン産生腺腫(aldosterone producing adenoma:APA)による片側病変に対しては手術による病変側副腎摘除術が望ましく、両側性もしくは手術の希望や適応のない場合にはMR拮抗薬(MR antagonist:MRA)の投与が必要である。
  • PAに対してMRA加療を行う場合には、MR活性化の十分な阻害を目指して投与量を調整するべきである。

2.総論

 PAは、アルドステロン(ALD)の自律性分泌により腎尿細管からのナトリウム・水の再吸収およびカリウム排泄亢進の結果、循環血漿量増加が起こり、結果としてレニン抑制、低カリウム血症、高血圧を呈する代表的な二次性高血圧である。PAは片側病変であれば手術摘除することで治癒可能な例があることに加え、本態性高血圧(essential hypertension:EH)に比して脳卒中、心肥大、心房細動、冠動脈疾患、心不全などの脳・心血管合併症の頻度が高く 1)、PAを疑う症例には適正な検査・治療がなされることが推奨される。
 全高血圧症におけるPAの頻度は、プライマリケア施設で3.8~12.7%といわれており 2)適切にスクリーニング検査を行い疑わしい症例を拾い上げることが重要である。
 スクリーニングは血漿アルドステロン濃度(plasma aldosterone concentration:PAC)を血漿レニン活性(plasma renin activity:PRA)で除した値(aldosterone renin ratio:ARR)を用い、ARR≧200かつPAC≧60pg/mLで陽性と判定する(ARR100~200はARR境界域とし患者ニーズや臨床所見、年齢などを考慮し、機能確認検査実施の要否を個別に検討する)。スクリーニング陽性者に対しては、各種負荷試験(機能確認試験)を行い、ALDの過剰産生が示されるとPAの診断が確定される。
 PAの治療方針は、その病型や病変の局在に強く関与する。PAの病型には主に片側性PA(アルドステロン産生腺腫〔aldosterone producing adenoma: APA〕)と両側性PA(特発性アルドステロン症〔Idiopathic hyperaldosteronism:IHA〕)とがある。手術の適応となるのは片側からの比較的強いALD分泌をきたす片側性PAである 3)
 片側性PAでは、CT所見や腫瘍サイズにかかわらず、病変側副腎摘出によりALD過剰や低カリウム血症などを改善させることができる(生化学的治癒) 4)。一方で、病側副腎摘除をしても臨床的な高血圧の治癒(臨床的治癒)が得られるのは約30~52%にとどまる。この理由としては高血圧にかかわるさまざまな生活習慣に加え、閉塞性睡眠時無呼吸(obstructive sleep apnea:OSA)、腎障害、肥満症などの合併が原因と考えられている。
 片側性の確定診断をするには、副腎静脈サンプリング(adrenal venous sampling: AVS)を行うべきである。CT/MRIなど画像検査のみで腫瘍の存在を診断した場合に、実際にその腫瘍がALD過剰分泌をしているという正診率は低く(37.8%が誤診)、AVSは片側性の診断において感度95%、特異度100%でありCT/MRIより明らかに有用である。
 片側性PAでは病変側副腎摘出術が推奨されるが、両側性PAの場合や、片側性PAであっても併存症のために手術ができない、もしくは手術希望がない場合には、MRAを第一選択とする薬物治療を行う 3)。ALD過剰によるMR活性化の十分な抑制により臓器障害進行が抑制される。MRA増量によりもたらされる血圧正常化、カリウムの正常化(加療開始前に低カリウム血症が認められる場合)がある程度の治療効果の目安となるが、重要なのは「MR活性化を十分阻害できている」ことである。MRAによる治療後にレニン抑制の解除(PRA≧1ng/mL/hr)を認める場合には、心腎血管リスクをEHと同等まで改善できるいう報告があり、PRA≧1というのは一つの目安となり得る 5)

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