進化する1型糖尿病診療

  • 小谷紀子 Kodani, Noriko
    国立国際医療研究センター病院 糖尿病内分泌代謝科
    町川香代子 Machikawa, Kayoko
    国立国際医療研究センター病院 看護部
公開日:2023年9月21日

はじめに

 1型糖尿病ではインスリンを分泌する膵β細胞が壊されてしまうことによりインスリンが分泌されなくなる。したがって、インスリンを補いさえすれば、1型糖尿病のない人と変わらない生活を送ることができるといわれている。しかし、適切にインスリンを補うことが簡単ではない。一人一人の生活、活動、食事の好み、体調、ライフイベント、また経済的状況などに合わせて、十人十色の血糖管理の方法がある。一人一人にベストな方法を見つけて、1型糖尿病のない人と変わらない人生を目指して、患者さんと共に取り組みたいと考える。

1.1型糖尿病の診断

 1型糖尿病は発症様式別に、膵島関連自己抗体が関与する急性発症1型糖尿病 1)と緩徐進行1型糖尿病 2)、そして、特発性の劇症1型糖尿病 3)に分類される。急性発症1型糖尿病は高血糖症状の出現後、おおむね3カ月以内にケトーシスあるいはケトアシドーシスに陥り、直ちにインスリン療法を必要とする。緩徐進行1型糖尿病は、膵島関連自己抗体陽性を確認しても、ケトーシスあるいはケトアシドーシスに至らず、直ちにインスリン療法を必要としないことが多い。2023年、緩徐進行1型糖尿病の診断基準が改定された。最終観察時点でCペプチド<0.6ng/mLと内因性インスリン分泌の低下が確認されれば「緩徐進行1型糖尿病definite」と診断は確定する。インスリン分泌の低下を認めない場合は「緩徐進行1型糖尿病probable」としてCペプチドの推移を追う。この新しい診断基準により経年的に内因性インスリン分泌の低下を認めない症例においては、インスリン治療以外の治療法を検討する選択肢を考慮できるようになった。劇症1型糖尿病では高血糖症状出現後1週間前後でケトーシスやケトアシドーシスに陥り、直ちにインスリン注射の開始が必要となる。

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