多職種連携による肥満治療の効果的な動機付け

  • 浅原哲子 Satoh-Asahara, Noriko
    独立行政法人国立病院機構京都医療センター 臨床研究センター 内分泌代謝高血圧研究部長/名古屋大学環境医学研究所 メタボ栄養科学寄附研究部門 特任教授
    加藤さやか Kato, Sayaka
    独立行政法人国立病院機構京都医療センター 臨床研究センター 内分泌代謝高血圧研究部
    岩佐真代 Iwasa, Masayo
    独立行政法人国立病院機構 京都医療センター 臨床研究センター 内分泌代謝高血圧研究部
    池上健太郎 Ikeue, Kentaro
    独立行政法人国立病院機構 京都医療センター 臨床研究センター 内分泌代謝高血圧研究部
    若林 大 Wakabayashi, Dai
    独立行政法人国立病院機構 京都医療センター 臨床研究センター 内分泌代謝高血圧研究部/奈良県立医科大学大学院医学研究科臨床実証医学講座/伏見桃山総合病院 薬剤科
公開日:2023年7月11日

はじめに

 近年、飽食の時代の到来ともにわが国でも肥満人口が増加し、内臓肥満を基盤に複数の生活習慣病が集積するメタボリックシンドローム(MetS)が予備群合わせて、成人男性の2人に1人、女性の5人に1人にのぼる 1)。国内外の疫学研究より、MetSの危険因子が重積するほど心血管病(CVD)リスクが上昇し、脳卒中、CVDや慢性腎臓病(CKD)の発症率が有意に高くなることが示された 2, 3)。糖尿病においても肥満が原因で発症する患者が急増していたため 4)、当院の糖尿病センターでは、2001年に「肥満・運動療法外来」を開設し、2004年以降は「肥満・メタボリック症候群外来」と改称して、22年にわたり、肥満を専門とした生活習慣病の診療を行ってきた。本稿では、22年来の多職種連携による肥満・メタボ診療の経験に基づいて、効果的な肥満治療の動機付けについて概説する。

1.日本人肥満症の実態―国立病院機構多施設共同研究の成績から―

 国民健康づくり運動「健康日本21」の最終報告では、日常生活の歩数や肥満者の割合などの目標値に対する達成状況が非常に悪く、肥満者の「生活習慣の是正」や「減量すること」の難しさがうかがえる。われわれが2006年より構築してきた国立病院機構(NHO)多施設共同肥満症コホート(NHO Japan Obesity & Metabolic Syndrome Study:JOMS〔図1〕)ではMetS危険因子が重積するほど高感度CRPや動脈硬化指標(CAVI)などのCVDリスクやCVDイベントが有意に上昇することを認めた 5, 6)。また、3カ月の減量治療でもCVDやCKDリスクが有意に改善しており(図25~7)、減量治療の重要性が示されたが、日本肥満学会の肥満症診療ガイドライン2022では、減量目標は3~6カ月で現体重の3%減と明記されている 8)。一方、われわれのNHO-JOMSコホートにおける5年の追跡調査では、MetS・CVDリスクの改善には長期では7%以上の減量が必要であることが示された 9)

図1 国立病院機構(NHO)肥満症ネットワーク研究 わが国のメタボリックシンドロームにおける減量効果に関する多施設共同研究 2006~2011年
図1 国立病院機構(NHO)肥満症ネットワーク研究 わが国のメタボリックシンドロームにおける減量効果に関する多施設共同研究 2006~2011年

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