はじめに プロラクチン産生PitNET(プロラクチノーマ)は下垂体前葉から発生するプロラクチン(PRL)を自律分泌する腫瘍である。治療の第一選択はドパミンアゴニスト(DA)、特にカベルゴリンによる薬物療法であり、血清PRLの低下と腫瘍縮小が得られる。プロラクチノーマの多くは女性に発生し、ほとんどはミクロプロラクチノーマ(<10mm)であり、マクロプロラクチノーマ(>10mm)、特に鞍上部進展を伴うものは少ない。高プロラクチン血症は中枢性に性腺機能を抑制し、女性では月経不順や無月経で診断されることが多く、不妊の原因となる 1)。
はじめに 原発性副甲状腺機能亢進症(primary hyperparathyroidism:PHPT)は比較的頻度の高い内分泌疾患であり、40歳以上での発症が多く、男女比は約1:3と女性に多い 1)。そのため、妊娠可能年齢の女性や妊娠中に診断されるケースもある。高カルシウム(Ca)血症をきたしたPHPT合併妊娠では、母体および児にさまざまな合併症をきたし得る。本稿では、妊娠合併PHPTの診断・治療や母体・児への影響について解説する。
ポイント 肥満症患者に外科治療(肥満手術)は有用であり、主に3つの術式が行われているが、本邦で保険適用となっているのは、腹腔鏡下スリーブ状胃切除術(LSG)のみである。 2型糖尿病などの肥満関連合併症の改善を目的としたメタボリックサージェリー(代謝改善手術)も近年注目され、先進医療として、腹腔鏡下スリーブバイパス術(LSG-DJB)も行われている。 本邦における手術適応年齢は、現在は18~65歳であるが、世界の動向を鑑みると66歳以上の高齢者や18歳未満の小児・思春期への減量・代謝改善手術も今後行われるようになる可能性が高い。
はじめに 高血圧を合併する妊婦は6~8%であるが、その大部分(88%)は本態性高血圧症で、内分泌性高血圧症は1%未満と非常にまれである 1)。本稿では、妊娠中の内分泌高血圧症として原発性アルドステロン症(primary aldosteronism:PA)、褐色細胞腫・パラガングリオーマ(pheochromocytoma/paraganglioma:PPGL)の診断・治療について述べる。
はじめに 糖尿病とその合併症に関連した障害に対し、一定の条件を満たす場合には社会保障を受けることが可能であり、その主な社会保障には表1に示すような制度がある。また高額療養費制度、難病医療費助成制度、小児慢性特定疾病医療費助成制度は、費やされた医療費を助成し、障害年金、身体障害者手帳、特別児童扶養手当、心身障害者(等)福祉手当は、生活面を支援する制度である。そして今回は、これらの公的支援制度について、糖尿病に係る内容を概説する。
はじめに 下垂体機能低下症患者では障害されたホルモンに応じて継続的な補充が必要である(表1)。一方で、ホルモンの需要はライフステージやライフイベントにより大きく異なるため、都度調整の必要がある。本稿では妊娠中・出産時・授乳期の女性における課題とホルモン補充について概説する。
Q&A編はこちら はじめに 慢性疾患を有する外来患者へのパーソナルヘルスレコード(personal health record: PHR)をはじめとしたデジタル技術の応用が、治療アドヒアランス、自己管理または自己効力感改善に有効であることが報告されてきている 1)。糖尿病治療においてもデジタル化の波が進んできており、間歇スキャン式持続グルコースモニタリング(intermittently scanned continuous glucose monitoring:isCGM)、コネクテッドインスリンデバイス、PHRを中心とした臨床応用が広がっている。 これら糖尿病関連デジタルデバイスを有効に用いることで、糖尿病治療に関連するさまざまな情報を統合し、治療にフィードバックすることが可能となる。本稿では糖尿病関連デジタルデバイスに関するキーデバイスとその実臨床での応用法、および現在までに得られているエビデンスを含め概説する。
はじめに 妊娠、分娩は女性のライフステージにおいて大きなイベントである。甲状腺疾患は妊娠可能年齢の女性に多く、妊娠前、妊娠中、産褥期のケアについてあらかじめ知識を得ておくことで甲状腺機能異常への対応が臨機応変に可能となり、専門医への紹介のタイミングや産科や新生児科との連携、治療の見通しが立てやすくなる。
はじめに 糖尿病を有する女性は周産期合併症予防のため、妊娠前から妊娠中、分娩後にわたり、厳格な血糖・血圧・体重管理が必要である。妊娠可能年齢の女性には計画妊娠の方法・内容について事前に十分説明しておく必要がある。本稿では、糖尿病を有する女性の妊娠前管理(計画妊娠)と妊娠中、分娩時、授乳期における治療とケアについて解説する。
はじめに 血糖値の恒常性は、インスリンとグルカゴンに代表されるホルモンによって、肝臓の糖産生と末梢組織におけるグルコース利用が調節されることで維持されている。本稿では、これらのホルモンによる肝臓と骨格筋・脂肪組織における糖代謝調節機構について概説する。また後半では、その他の臓器を標的とする糖尿病治療薬としてメトホルミンとSGLT2阻害薬を取り上げ、消化管および腎臓を介した血糖降下作用の機序を紹介する。
はじめに 妊娠中に血糖の異常をきたす「妊婦の糖代謝異常」は、母児の健康問題を引き起こすことが知られている(表1)。母体に惹起される問題は流産および早産、羊水過多、帝王切開となる率の増加、妊娠高血圧症候群の合併などがある。児については、妊娠初期から高血糖状態にある場合には胎児死亡(母体の流産につながる)や先天異常、妊娠経過中の母体の高血糖状態の児への影響としては巨大児・large for gestational age(LGA)児(過体重児)、新生児低血糖症、高ビリルビン血症、低カルシウム血症、呼吸窮迫症候群などが挙げられる 1)。妊婦の糖代謝異常は全妊婦のうちのおよそ10%にみられると考えられており、妊娠中に血糖測定などの検査を行い、見逃すことなく発見し母児の健康問題のリスクを回避しなければならない。本稿では、妊婦の糖代謝異常について、診断を中心に述べる。
医学と医療の進歩とともに、妊娠中の女性の健康を守るための知識と技術が高度化してきた。その中でも糖尿病・内分泌代謝領域においては、高血糖と高血圧の管理が、母体と児の健康を守る上で重要な課題となっている。また、生殖年齢の女性に好発するバセドウ病をはじめとする甲状腺機能異常症への対応についても多くの経験が蓄積されてきた。さらに、妊娠希望者の高齢化や生殖補助技術の進歩により、さまざまな疾患や病態を抱えて妊娠・出産を希望する女性が増えており、これらの女性への対応も重要な課題となっている。このような背景から、プレコンセプションケアという考え方が注目されるようになり、多くの医療機関で実践されるようになっている。 本特集では、糖尿病・内分泌代謝領域に焦点を絞って、妊娠・出産もしくはそこに至る過程において生じるさまざまな問題について実践的な知識と情報を提供することを目指した。糖尿病もしくは糖代謝異常を有する患者においては、妊娠前から出産後の授乳に至るまで、さらには糖代謝異常に関するその後のフォローアップまで、きめ細やかな対応が必要であり、そのための解説を提供できるよう配慮した。 また、妊娠中の高血圧症は、とりわけ妊娠後期の母児の健康に重大な影響を及ぼす。かつては妊娠中毒症と称されていた病態は、現在では妊娠高血圧症候群と称される。とりわけ妊娠高血圧腎症は、妊娠20週以降に初めて高血圧を発症し、かつ蛋白尿を伴うもので、分娩12週までに正常に復する場合である。ただし、蛋白尿を認めなくても肝機能障害や腎障害、母体脳卒中や神経障害、血液凝固障害、子宮胎盤機能不全などを認める場合も妊娠高血圧腎症と診断し、適切な治療が必要とされる。内分泌代謝領域では、とりわけ原発性アルドステロン症と褐色細胞腫が重要である。妊娠中は薬物療法に制限のある中で、手術を含めてどのように考え、対処するべきかを知ることが大切である。 バセドウ病は生殖年齢の女性に好発するため、その治療中に妊娠・出産を検討する場合が多い。また、時には、妊娠中にバセドウ病罹患に気付かれることもあり、対応に苦慮する。いずれの場合も、無事に出産、そして授乳に漕ぎつけることができるようさまざまな対応が必要となるため、そのための知識を学び、実践することが望まれる。 原発性副甲状腺機能亢進症は女性に好発し、多くは自他覚症状に乏しい。そのため、健診や医療機関受診の機会の少ない若年女性では、罹患に気付かないままに妊娠し、妊娠中に本症と診断されることがある。著しい高カルシウム血症のまま分娩に臨むことは避けるべきであり、妊娠の安定期に副甲状腺手術を実施することが教科書的であるが、現実的な対処法についての記述は乏しい。本特集ではより具体的な解説を提供することを心がけている。 現在は、生殖補助技術により、中枢性卵巣機能不全であっても挙児が可能となっており、間脳下垂体疾患の女性の妊娠・出産はまれではない。このような患者に対応することも内分泌代謝科医師の責務であり、そのための研鑽にも、本特集の論文を積極的に活用していただければ幸いである。 著者のCOI (conflicts of interest)開示:本論文発表内容に関連して特に申告なし 本論文のPDFをダウンロードいただけます
はじめに 医科診療報酬点数表に掲載されている「基本診療料」は、初診、再診および入院時に行われる基本的な診療行為の費用を一括して評価するものである。一方、医科診療報酬点数表の「特掲診療料」は、基本診療料として一括して支払うことが妥当でない、特別の診療行為に対して個々に点数を設定し評価を行うものであり、評価項目は、「医学管理等」、「在宅医療」、「検査」、「画像診断」および「投薬」に分けられる。「医学管理等」は、特殊な疾患に対する診療で、医療機関が連携して行う治療管理および特定の医学管理などが行われた場合に算定する点数である 1)。よって今回は、糖尿病に係る「医学管理等」の算定項目について、2022年度の診療報酬改定に従い、「診療報酬の算定方法の一部を改正する件(告示)」 2)、「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)」 3)、「特掲診察料の施設基準等の一部を改正する件(告示)」 4)および「特掲診療料の施設基準等およびその届出に関する手続きの取扱いについて(通知)」 5)、これらをもとに概説する。
はじめに 糖尿病治療の目標は糖尿病のない人と変わらない寿命とQOLの確保であり、そのためには、血糖値を目標レベルにすることに加えて、脂質、血圧、肥満、喫煙などの多くのリスクを総合的にコントロールし血管障害などの種々合併症を予防することが必要といわれている。このフレーズは、血糖値を目標レベルに維持することのみに集中することへの注意喚起で、血糖値を目標レベルに維持することは糖尿病治療の基礎と思われる。血糖値をできる限り厳格に調整するのがよいには違いないが、平均的な血糖値レベルの指標であるHbA1cを基準とした場合は、低血糖のリスクが増え死亡のみならず血管障害も悪化させることが知られており、血糖値の上下変動が小さい、低血糖のリスクを減らした形での血糖値目標レベルの設定が必要と思われている 1)。このような目標の達成は、血糖値を血糖値非依存性に下げるSU薬やインスリンを中心とした従来の治療法では難しかったが、ここ10年、インクレチン関連薬やSGLT2阻害薬などの単独では低血糖のリスクを高めない種々の薬剤が使えるようになり、可能になりつつある。
はじめに 2型糖尿病の注射療法において、GLP-1受容体作動薬はすでに定着したが、2023年4月から新たな作用機序であるGIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチドが発売された。
前編 医師の立場から はじめに バセドウ病には治癒がなく、寛解を目指して治療を行う病気である。バセドウ病の療養は長期にわたるため、患者が継続的に病気と向き合い付き合っていくことが必要となる。そのためには、まず患者自身が病気の正しい知識を持つこと、自らが病気を理解して、治療に参加できるように支援すること、患者本来の社会生活が大きく中断されることがないよう多職種が連携して患者支援をおこなっていくことがポイントとなる。特に、これまで行ってきた治療方法からの変更にあたっては、患者への十分な情報提供を行った上で、患者自身が納得してより適切な治療選択ができるように、職種を超えて患者をサポートすることが必要である。
後編 医療スタッフの立場から Q&A編はこちら はじめに バセドウ病では甲状腺の自己免疫異常により甲状腺刺激ホルモンの受容体(TSH受容体)に対する抗体(TRAb)が出現している。このTRAbが甲状腺を刺激し、甲状腺が腫れ、甲状腺でのホルモンの分泌が盛んになりさまざまな症状を示す。バセドウ病は20~40歳台に好発し、男女比は1:4と女性に多い。バセドウ病は妊娠や出産などのライフステージにあわせて治療を選択したり、喫煙やストレスなど日常生活が増悪因子になり得ることから、禁煙したりストレスとうまく付き合いながら治療を継続したりする必要がある。また、薬物療法の中心である抗甲状腺薬治療では、副作用の頻度が高いこと、病気の勢いが安定せず薬の中止に至らない寛解導入困難や薬を中止することができた後にも再発が起こり得ることから、より確実にバセドウ病をコントロールするため放射性ヨウ素内用療法や手術への変更が好ましい場面がある 1)。適切な治療選択へ向けては、患者へ十分情報を提供しよく相談した上で意思決定がなされることが必要である。
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